B型肝炎訴訟の流れ
B型肝炎訴訟で給付金を受け取る手続きの大まかな流れは以下のとおりです。
①自分でやるか、弁護士に依頼するかを決める
訴訟手続きは自分で行なうことも可能ですが、弁護士に依頼するのが一般的です。
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②必要な証拠書類を収集
検査記録、カルテ、戸籍などの、証拠となる書類を集めます。
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③国に対して訴訟を起こす
収集した証拠を元に訴状を作り、訴訟を提起します。
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④国からの和解案に応じる
被告である国から和解案が出てきたら、内容を確認して和解します。
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⑤給付金を受給する
和解調書を元に給付金を請求し、受け取ります。
1. 自分でやるか、弁護士に依頼するかを決める
まず、最初にやることは、どうやって手続きを進めていくかを決めることです。
B型肝炎訴訟の手続きは、自分で行なうことも可能ではあります。
しかし、相当な知識とかなりの時間を必要とするため、弁護士に依頼するのが一般的です。
自分で手続きを進めるとすると、
- 民事訴訟の基本的な知識
- B型肝炎の病態や検査法に関する知識
- 医療記録(カルテ)を読み解くための一般的な医学知識
といった知識が必要になります。
また、必要な検査方法や項目について病院に正確に伝えたり、自分の集めた証拠を元に主張を組み立てて訴状を作成したりするのに、相当の時間と労力も必要になります。
場合によっては、
- 医療記録(カルテ)の開示に関して病院との交渉
- 国からの反論に対して証拠を追加提出するなどの対応
- 戸籍などの公文書が古くて残っていない場合の対応
といった対応が必要になることもあり、手続きを確実に最後まで進めるには、想定外のことにも柔軟に対処できる交渉力や充分な時間がなければ難しいです。
弁護士に依頼する場合は、そういった知識や交渉力は弁護士がもっていますし、弁護士が代わりに手続きを進めてくれるので、時間や労力も最小限にすることができます。
ただ、弁護士費用がかかるのがネックです。また、病院によっては弁護士からの医療記録(カルテ)開示請求に応じないこともあり、自分で出向いて手続きしなければならないケースもあります。
知識や交渉力に自信があり、時間も充分にとれるなら自分で手続きを進めてみる。
難しい手続きを進める自信がなかったり、忙しくて時間がないなら弁護士に依頼する。
というのがいいかと思います。
弁護士に依頼するのも、いろんな法律事務所がありますので、条件や費用を確認して自分にあった事務所を選んでください。
2. 必要な証拠書類を集める
B型肝炎給付金の対象者であると認められるためには、いくつかの条件があります。
そうした条件を満たしていることを訴訟で証明するために、証拠となる書類を集める必要があります。
人によって給付金受給に必要となる証拠には違いがありますが、例をあげると以下のようなものです。
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本人の血液検査結果の記録
B型肝炎給付金の対象となる本人が、B型肝炎ウイルスに持続感染していることを証明するための資料です。 -
母親の血液検査結果の記録
B型肝炎ウイルスに感染する最も有⼒な原因とされているのが、母子感染です。
したがって、集団予防接種によってB型肝炎ウイルスに感染したと主張するために、⺟⼦感染でないことを証明することが必要になります。 -
母子手帳
幼少期に集団予防接種を受けたことを証明するための資料です。 -
医療記録(カルテ)
集団予防接種以外でB型肝炎ウイルスに感染した原因がないかどうかを確認するため、B型肝炎ウイルス感染が判明した時期や、B型肝炎が発症した時期の医療記録(カルテ)が必要になります。 -
戸籍
集団予防接種によってB型肝炎ウイルスに感染するリスクのある時期に幼少期を過ごしたことを証明するために、給付金対象の生年月日に該当するかどうかや、7歳までの幼少期に日本に住んでいたかどうか、母親などに間違いがないかの確認などのために必要になります。
ここにあげたものはほんの一例です。
この全てが必ず必要になるわけではありませんし、ここにはあげていない資料が必要になるケースもたくさんあります。給付金受給の条件をどうやって満たすかは、ケースバイケースですし、その際に必要になる証拠資料も人によって様々です。
弁護士に依頼する場合は、そういった判断は弁護士におまかせしておけば問題ないですが、自分で給付金請求手続きを進める場合には、給付金受給条件をよく確認し、自分がどの条件をどう満たすのか、そのためにどんな証拠資料が必要になるのかをしっかり判断しなければなりません。
また、証拠を集める過程で、B型肝炎給付金の受給条件を満たさないことが判明したり、受給条件は満たしていてもそれを証明する有効な証拠が残っていないことが明らかになったりすることもあります。
そういった意味では、証拠集めをしながら自分が給付金受給対象者かどうかを確認していく作業でもあると言えます。
自分で給付金を請求する場合には、証拠集めに行き詰ったときに、諦めるのか、他に方法があるのか、なども自分で判断することになります。
3. 国に対して訴訟を起こす
証拠書類が集まり、給付金対象者としての条件を満たしていることが確認できたら、それを元に訴状を作成し、国を被告として訴訟を提起します。
B型肝炎訴訟の訴状では、一般的な民事訴訟での記載事項である請求の趣旨や理由などは当然のことながら、B型肝炎給付金の受給条件に照らして、どの条件をどういう形で満たして、それをどの証拠で証明しているのか、といったことを整理して記載しなければなりません。
弁護士に依頼すれば訴状は当然弁護士が書いてくれますが、自分で手続きをする場合は訴状も自分で作成する必要があります。
4. 国からの和解案に応じる
訴訟が始まっても、しばらくはずっと待つことになります。
一般的な訴訟とは違い、国が和解案を出してくるまで訴訟には進展がありません。
B型肝炎訴訟は、多くの人が給付金を請求して訴訟を起こしているため、膨大な数の訴訟に対応している国が証拠資料を確認するのを待たなければなりません。
訴訟してからしばらく経って、国がこちらの提出した証拠を確認し、給付金対象者であることが確認できると、和解案を出してきます。
この和解案が、こちらの請求よりも低い金額だった場合は、国がこちらの主張の一部しか認めていないということです。その場合は、国が認めていない部分について追加の証拠を提出するか、諦めて低い金額で和解するかの選択になります。
こちらの請求どおりの和解案がくれば、それに応じて和解を成立させることになります。
5. 給付金を受給する
和解成立という形で訴訟が終了すると、裁判所が和解調書というものを出してくれます。これは、訴訟の結果を証明するためのもので、例えば判決まで争うような訴訟をした場合の判決書と同じものです。
給付金は訴訟の中で支払われるものではなく、この和解調書を元に、社会保険診療報酬支払基金へ給付金を請求する必要があります。請求して概ね1ヶ月程で、給付金が指定した口座に振り込まれます。
自分で給付金請求手続きを進めていれば、ここで直接自分の口座を指定して振り込まれてくることになりますが、弁護士に依頼した場合は、一般的にはまず弁護士事務所の口座に給付金が振り込まれ、弁護士事務所がそこから弁護士報酬や実費を引いて、残りの金額をあなたの口座に振り込んでくるという流れになります。
6. まとめ
B型肝炎訴訟には、血液検査や証拠集めから始まって長い道のりがあります。
しかし、弁護士に依頼すればそのほとんどを代わりにやってもらえるので、おそれることはありません。弁護士費用のことが気になる方もいらっしゃるかもしれませんが、基本的には給付金から支払うことになりますので自分の財布は痛みません。
相談は無料という弁護士事務所も多いので、まずは一歩を踏み出してみてください。