B型肝炎給付金の相続税対策

B型肝炎給付金は、患者本人が給付金を受け取ってから死亡した場合は、単なる現金として相続財産となり、相続税の課税対象になります。しかし、患者が死亡した後に相続人から給付金を請求する場合は相続財産とはならないため、相続税はかかりません。
相続税対策と考えるのは不謹慎かもしれませんが、交通事故などの一般的な損害賠償よりも請求のタイミングなどを調整しやすいので、一定の条件が揃えば意図的に相続税を回避できるケースもあります。

B型肝炎給付金の相続税対策

1. 相続前にB型肝炎給付金を受給したケース

B型肝炎給付金は、損害賠償金又は見舞金としての性格を持つものと考えられるため、所得税などの税金は課税されません。
しかし、一旦受給してしまえば単なる現金として取り扱われるため、給付金受給後に受給した人が死亡したときには、通常どおり相続税の課税対象となります。
詳しくは「B型肝炎給付金に税金はかかる?」をご覧ください。

2. 相続後にB型肝炎給付金を受給したケース

患者ご本人が死亡した後に、相続人からB型肝炎給付金を請求した場合、相続人が受け取った給付金は相続財産とはならず、相続税の対象にはなりません。

そもそもB型肝炎給付金が損害賠償金又は見舞金等に相当するものであり、相続人が給付金を請求した場合、給付金は遺族への損害賠償金もしくは見舞金として国から遺族に支払われるものと考えられるため、そもそも相続財産とはみなされず、相続税はかかりません。また、損害賠償金もしくは見舞金であるため、給付金を受け取った人に所得税もかかりません。

相続人が複数人いるケースでは、相続人のうち1人からB型肝炎給付金の全額を請求することができます。
通常、こういったお金の請求は相続人全員でやる必要があるのですが、B型肝炎給付金の場合は特別措置法で定められているため、1人の相続人が全額請求できます。

このとき、請求した相続人が給付金全額を受け取り、他の相続人に対して法定相続分に応じて分配するときのお金のやり取りが贈与にあたり、贈与税がかかりそうな気もしますが、この場合も、贈与税はかかりません。給付金を請求した相続人は、全相続人を代表して給付金を請求しただけで、受け取った給付金はあくまでも他の相続人の給付金を預かっている状態とされ、預かっているものを返すだけでしかないので贈与にはならず、したがって課税対象にもならないというわけです。

3. 相続税についてちょっと不公平な感じがするとき

相続税で不公平を感じてるイメージ

B型肝炎給付金は、国から受け取るときには相続税も所得税もかからないということがお分かりいただけたかと思いますが、場合によってはちょっと不公平に思えるときがあります。

例として、次の3つのケースをあげてみます。

  • ケース① 患者本人の死亡後に、相続人から請求して受給
  • ケース② 患者本人が受給し、間もなく死亡
  • ケース③ 患者本人が受給し、それから長生きして死亡

ケース①はすでに説明した通り、給付金は相続財産になりませんので相続税の対象にはなりません。ケース②・ケース③では患者本人が受給した時には所得税の対象にはなりませんが、その後死亡した場合は相続税の対象になります。

ケース③で相続税がかかるのは、受給してから時間も経ち、給付金をいろいろなことに使ったり、別でお金を稼いだりして、他の財産と区別がつかなくなっていると考えれば納得しやすいと思いますが、ケース①とケース②はお金が入ってきたのが死亡後だったか死亡前だったかという点が違うだけで、状況にそれほど大きな違いはないと思われます。
ケース②では、患者本人が給付金を受け取ったとしても、給付金を使う時間はあまり残されていなかったでしょうし、もしかしたら入院されていたりして現実的にお金を使う状況になかったりすることもあるでしょう。結果として、給付金のほとんどが使われずに残ったままになるということが多いと思います。
そういった状況を考えると、ケース②が相続税の対象になるのは、心情的に少し可哀想に思えます。しかし、相続税の対象になるかどうかの境目はケース①とケース②の間となるのがまぎれもない事実であり、結果論に過ぎないかもしれませんが、B型肝炎給付金は患者本人が受け取るよりも死亡してから相続人が受け取る方が相続税の面では有利になることは否定はできません。

しかしながら、本人死亡後は請求に必要な資料をそろえるハードルも上がるため、相続税対策のために請求手続きを見合わせるというのはリスクは大きいです。
まず、当然のことながら死亡後は、本人について新たな検査はできません。時間をおいて2回検査が必要な場合、本人はすでに死去されていますので、もう一度検査したくても当然ながら検査はできません。ジェノタイプや塩基配列の検査も同様です。 訴訟中に国側から新たな証拠提出を求められたとき、それが改めて本人の検査が必要なものだった場合にはどうしようもなくなります。
戸籍関係の必要書類も増えます。相続人からB型肝炎給付金を請求するときには、原告となって請求する人が本当に相続人であることを証明する必要があるため、証拠として提出しなければならない戸籍類がかなり多くなります。 戸籍の収集には思わぬ時間がかかることもあるので、提訴するのが当初の見込みよりも遅れてしまうことも考えられます。
本人の死因がB型肝炎と関係ないものだと、発症から20年の除斥期間を経過してしまうことで請求できる給付金額がかなり減少してしまうので、いつまでに提訴しなければならないかというスケジュール管理もシビアになります。

このように、相続税対策としてあえて本人死亡後にB型肝炎給付金を請求するというのは、リスクの高い選択になります。 相続人から請求しようとしたときに資料がそろわず受給できないというようなことになれば本末転倒になってしまいます。

4. 追加給付金の相続税

追加給付金とは、一度B型肝炎給付金を受け取った人の肝疾患が悪化して病態が進行したとき、進行後の病態に該当する金額を追加で受け取れるというものです。詳しくは「追加給付金請求とは?」をご覧ください。

追加給付金の課税関係は、最初に受け取った給付金と同様で、相続人が追加給付金を受給する場合は相続税の対象にはなりません。
また、最初の給付金請求と違ってたくさんの資料をそろえる必要もなく、病態が進行したことを証明する診断書があれば請求手続きができます。病態が進行したことを知ってから3年以内に請求しなければ受給できなくなってしまいますが、その範囲内であればある程度意図的に請求時期を調整することも可能になります。

病態進行時に余命宣告があった場合などは、相続税の観点で考えれば追加給付金を請求するタイミングは慎重に考えた方がいいかもしれません。
それくらい限定的なケースでは、B型肝炎給付金にも相続税対策を考える余地があることになります。

5. まとめ

国の責任で感染してしまった方に対して、金額に着目した話は不謹慎だと思われる方もいると思います。
しかし、B型肝炎給付金は高額になることもあり、一般的には相続税対策を考慮する必要はありませんが、特定の状況においては相続税の課税対象になるか否かが非常に大きな違いとなります。

実際の請求手続きを行なう際には、給付金制度の点で注意すべきこともあり、専門的な検討が必要になるため、必ず弁護士などの専門家に相談してください。

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