B型肝炎訴訟の和解状況
B型肝炎訴訟について、「給付金の対象になるのは一部の人だけ」「どうせもらえない」と思っている人も多いと思います。
本当にそうなのでしょうか。
今回は、B型肝炎訴訟の提訴実績や和解状況などから、実際にどのくらいの人が給付金をもらっていて、もらえる確率はどれくらいになるのかを見ていきましょう。
1. B型肝炎給付金の推計対象者数
B型肝炎給付金の対象になる人は、推計で約45万人と言われています。
一見してかなりの数ですが、なぜ45万人もの人に給付金が支払われることになったのでしょうか?
そもそもB型肝炎給付金は、集団予防接種のときに注射器が使い回しされないように指導をする義務を国が果たさず、それが原因で、B型肝炎ウイルスに持続感染してしまった人に損害賠償金や見舞金といった意味合いで国がお金を払うものです。
集団予防接種は日本全国で行われていたので、被害者も日本全国に散らばっています。したがって、どこの誰が給付金の対象になっていてもおかしくない状況です。
推計対象者が約45万人ですが、実際この数が多いのか少ないのか、現時点でB型肝炎の患者となっている人が手続きして給付金をもらえる可能性はどれくらいあるのか、そういったことを考えるために、他の数字も合わせて分析していきます。
2. 日本国内のB型肝炎ウイルス感染者数
日本国内には、B型肝炎ウイルスの感染者が130万~150万人いると推定されています。
B型肝炎給付金の対象者が約45万人なので、B型肝炎ウイルス感染者全体の32%、おおよそ3人に1人が給付金対象という計算になります。
対象となったときに受け取れる給付金の金額は、病態や発症時期によって以下の表のとおり定められています。最大で3600万円という金額になります。
病態 | 発症後20年の経過 | 給付金額 |
---|---|---|
死亡、肝がん、重度肝硬変 | 経過前 | 3600万円 |
死亡、肝がん、重度肝硬変 | 経過後 | 900万円 |
軽度肝硬変 | 経過前 | 2500万円 |
軽度肝硬変 | 経過後、治療中 | 600万円 |
軽度肝硬変 | 経過後、治癒済み | 300万円 |
慢性肝炎 | 経過前 | 1250万円 |
慢性肝炎 | 経過後、治療中 | 300万円 |
慢性肝炎 | 経過後、治癒済み | 150万円 |
無症候性キャリア | 経過前 | 600万円 |
無症候性キャリア | 経過後 | 50万円 |
B型肝炎ウイルスが原因で、肝疾患で死亡した人の相続人や、肝がん・重度肝硬変の人がB型肝炎訴訟の手続きをすると、3人に1人は3600万円の給付金を受け取ることになります。
軽度肝硬変や慢性肝炎の人も、請求すれば3人に1人は該当する病態の金額を受け取ることができるはずです。
逆に言えば、3人に2人は対象外ということなので、もらえない確率の方が高いと言えなくもありません。しかし、金額もあわせて考えると、決して「やるだけ無駄」というような低い確率ではないと思います。
期待値で考えれば、死亡・肝がん・重度肝硬変の人は1200万円もらえるということになります。
3. B型肝炎訴訟の和解実績
次にB型肝炎訴訟の提訴・和解の実績を見てみます。
提訴とは訴訟を起こすことです。
B型肝炎訴訟の手続きは、国に対して訴訟を起こし、訴訟内で和解することで給付金受給が決定します。提訴してから和解までの期間は、スムーズにいけば1年程度で、長引けば2年以上になるケースもあります。
法務省によると、2018年1月31日までに提訴した原告数の累計は、54,402人であり、そのうち和解が成立したのが、33,879人とのことです。提訴と和解の数字に差がある理由は、提訴してから和解するまでに時間がかかるためと考えられます。
給付金の対象者は約45万人で、提訴したのが54,402人ということは、対象者全体の1割ちょっとしか提訴していないということになります。また、和解実績数で見ると、対象者全体のたった8%未満しか和解していない状態です。40万人弱の給付金は、提訴もされずに眠っているわけです。
B型肝炎訴訟で給付金がもらえるということを知らない人や、知っていても行動を起こさずにいる人がいかに多いかが、この数字から読み取れます。
4. 給付金請求期限の延長
B型肝炎給付金には請求期限があり、期限までに提訴しないと請求できなくなるのですが、実はこの期限が一度延長されています。当初は2017年1月12日までとされていたのが、2022年1月12日までに変更されました。
その理由は、国が当初想定していたよりも、全然提訴されていないからです。
この変更がされた当時の資料では、2015年12月時点で提訴していたのが約29,000人で、提訴は増加傾向にあったということですが毎月1,000件程度だったそうです。
あまりに少なすぎるので延長したということですが、2018年1月時点で54,402人になっているので、その後も提訴の数は毎月1,000件程度で続いているということになります。2015年以降、提訴の数は横ばいで、増加してはいないようです。
仮に今後もこのペースのままいくと、請求期限までに提訴するのは10万人強という計算になります。そうなれば、給付金対象と推計されている45万人のうち大半の人は請求しないままで期限を迎えてしまいそうな状況です。
5. まとめ
B型肝炎訴訟に関する様々な数字から、給付金をもらえる確率や請求状況を見てきました。
給付金の対象である可能性がありながら請求していない人がかなり多く驚かれたのではないでしょうか。給付金の制度もかなり整ってきているので、少しでも心当たりのある人は一度手続きを始めてみることをお勧めします。
とはいっても、具体的にどうすればいいのか分からないという人が多いと思います。そういうときは、まず弁護士に相談してみてください。
B型肝炎給付金の手続きは専門知識も必要ですし、時間も労力もかかるので、全て自分で進めるのは現実的ではありません。弁護士に相談すれば、現段階で何をすればいいのか教えてくれます。相談だけなら無料という弁護士も多いですし、仮に給付金の対象でなかったとしても弁護士費用だけとられるということはないと思います。
給付金を可能性のまま終わらせないためにも、まずは弁護士に相談して最初の一歩を踏み出してみてください。