B型肝炎患者への援助 助成金と給付金の違い
B型肝炎の患者さんやウイルスキャリアの方に対しては、国や自治体から様々な形で援助があります。支給される趣旨や名目により、助成金や給付金などと呼ばれます。
よく「助成金」と呼ばれているものは、正確には「医療費助成」と言い、B型肝炎が社会に蔓延するのを防ぐことを目的とした社会的措置です。
給付金は、国の責任で感染してしまった人への損害賠償や見舞金といった趣旨で支給されます。
[目次]
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- B型肝炎助成金について
- B型肝炎助成金の詳細
(1)制度の利用条件
(2)助成対象医療
(3)自己負担額
(4)助成期間
(5)制度の利用回数
(6)申請方法
- 無料のB型肝炎ウイルス検査
- B型肝炎給付金について
- B型肝炎給付金の詳細
(1)制度の利用条件
(2)給付金額
(3)給付金の請求期限
(4)制度の利用回数
(5)請求方法
- まとめ
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1. B型肝炎助成金について
B型肝炎やC型肝炎をはじめとするウイルス性肝炎は、日本で最大級の感染症です。
しかし、肝炎の段階で有効な治療をすることで、肝硬変や肝がんへの進行を防止できる上、治療薬の投与によって体内のウイルス増殖を抑制することができるため、他の人への感染も抑えることができます。
ただ、薬代や治療費が非常に高額なため、必要な治療を受けることが難しい人も多くいます。そうした状況が悪循環になり、肝炎の感染が広がるのを防ぐため、社会政策的な措置として助成金が支給されています。
例えば、B型肝炎ウィルスの増殖を抑えるバラクルードという薬は1錠1,000円以上もかかる上、一度飲み始めると長期間の服用を続けなければならないこともあり、その費用は非常に高額なものとなります。医療費助成がなければ、誰もが受けられる治療ではないことが火を見るよりも明らかです。
「助成金」という言い方をされることがよくあるので、一定の金額が助成金として支給されると勘違いされる方もいらっしゃるかもしれませんが、実際には助成金という名前でお金をもらえるわけではなく、医療機関での支払いをしなくてよくなるという制度で、正しくは「医療費助成」と言います。
2. B型肝炎助成金の詳細
(1)制度の利用条件
B型肝炎を発症している人であれば、感染経路に関わらず受けられます。
助成金の対象となる治療を必要としていることを示す診断書などは必要になります。
(2)助成対象医療
B型肝炎の患者に対して、以下の治療の医療費が助成されます。
- 核酸アナログ製剤(ラミブジン、アデホビル、エンテカビル、テノホビル)
- インターフェロン治療
(3)自己負担額
原則として、月に1万円までを限度とした自己負担額があります。
所得が一定基準を超える場合には2万円までが自己負担限度額になります。
所得の基準は以下のとおりです。
世帯の市町村民税(所得割)課税 年額 | 自己負担限度額(月額) |
---|---|
235,000円未満 | 10,000円 |
235,000円以上 | 20,000円 |
※世帯の課税年額の算定には、税法上・医療保険上の扶養関係にないと認められる人の分は課税額合算の対象から除外できます。
自己負担額の条件は、平成21年4月と平成22年4月の制度改正時に変更され、緩和されています。
(4)助成期間
医療費助成を受けられる期間は、治療法によって異なります。
病態 | 治療法 | 助成期間 |
---|---|---|
B型慢性肝疾患 | 核酸アナログ製剤 | 1年間 (1年ごとに更新可能) |
B型慢性肝炎 | ペガシス単独療法 | 1年間 |
B型慢性活動性肝炎 (HBe抗原陽性かつHBV-DNA陽性に限定) | インターフェロン単独療法 | 6ヶ月間 |
(5)制度の利用回数
核酸アナログ製剤については、1年ごとに更新することができるので、何度も助成を受けることができます。
インターフェロン治療については、過去にペグインターフェロン製剤による治療を受けていない人が同製剤による治療を受ける場合には、2回まで助成を受けることができます。
(6)申請方法
助成金をもらうには、まず住んでいる都道府県の保健所に必要書類を提出して申請します。審査に通ると受給者証がもらえるので、それを持って医療機関を受診します。
必要書類
- 肝炎治療(インターフェロン治療、インターフェロンフリー治療又は核酸アナログ製剤治療)受給者証交付申請書(発行:お住まいの都道府県)
- 医師の診断書(発行:かかりつけ医など)
- 患者の氏名が記載された被保険者証等の写し(発行:各保険者)
- 患者の属する世帯の全員について記載のある住民票の写し
- 市町村民税課税年額を証明する書類(4. 5.発行:お住まいの市町村)
実際の必要書類、提出先などは都道府県によって異なりますので、詳しくはお住まいの都道府県にお尋ねください。
3. 無料のB型肝炎ウイルス検査
医療費助成とは少し異なりますが、同様の趣旨で国がとっている措置として、肝炎ウイルス検査があります。
B型肝炎ウイルスの検査自体は、ほとんどの医療機関で受けることができるので、お近くの病院などでも検査することができます。この場合、保険適用になるかどうかの違いはありますが、普通に病院にかかったときと同様に有料となります。
しかし、以下の制度を利用すると、居住している地方自治体で実施する無料のB型肝炎ウイルス検査を受けることができます。
・健康増進法に基づく健康増進事業による肝炎ウイルス検査
・特定感染症検査等事業による保健所等における肝炎ウイルス検査
この他にも、職場の健康診断のときにB型肝炎ウイルス検査を実施している場合があります。また、出産経験のある人であれば、妊婦健診の中でB型肝炎ウイルス検査を受けている場合があります。
自覚症状がない方でも、これまでに1度もB型肝炎ウイルス検査を受けたことがない方は、少なくとも1度は検査を受けておくことをお勧めします。
4. B型肝炎給付金について
幼少期に集団予防接種を受けたとき、注射器が使い回しされたことによってB型肝炎ウイルスに感染した人が約45万人いると推定されています。これは国の管理や指導不足によって引き起こされたもので、国も責任を認めています。そのため、対象となる人には国からの損害賠償や見舞金といった意味合いで、B型肝炎給付金というお金が支給されます。
B型肝炎ウイルスは幼少期に感染すると、持続感染といってずっと体内にウイルスが残ることになるのですが、症状には表れないことも多く、また発症しても感染経路が明確にわかるものではないため、自分自身でB型肝炎給付金の対象者だということに気づいていない人が非常に多いと思われます。
5. B型肝炎給付金の詳細
(1)制度の利用条件
「幼少期の集団予防接種によって、B型肝炎ウイルスに持続感染していること」が条件となります。
制度として具体的に定められている条件は、以下のとおりです。
① B型肝炎ウイルスに持続感染していること
② 満7歳になるまでに集団予防接種等を受けていること
③ 集団予防接種等における注射器の連続使用があったこと
④ ⺟⼦感染でないこと
⑤ その他集団予防接種等以外の感染原因がないこと
(2)給付金額
B型肝炎給付金の金額は、肝疾患の病態や発症時期によって決まっています。
病態 | 発症後20年の経過 | 給付金額 |
---|---|---|
死亡、肝がん、重度肝硬変 | 経過前 | 3600万円 |
死亡、肝がん、重度肝硬変 | 経過後 | 900万円 |
軽度肝硬変 | 経過前 | 2500万円 |
軽度肝硬変 | 経過後、治療中 | 600万円 |
軽度肝硬変 | 経過後、治癒済み | 300万円 |
慢性肝炎 | 経過前 | 1250万円 |
慢性肝炎 | 経過後、治療中 | 300万円 |
慢性肝炎 | 経過後、治癒済み | 150万円 |
無症候性キャリア | 経過前 | 600万円 |
無症候性キャリア | 経過後 | 50万円 |
(3)給付金の請求期限
B型肝炎給付金は、制度上の請求期限が定められています。
2022年(平成34年)1月12日までに訴訟を起こして請求しなければ、その後は請求できなくなってしまいます。
(4)制度の利用回数
B型肝炎給付金は一括払いで受け取るため、原則として1回のみの支給となります。
ただ、支給後に肝疾患の症状が悪化して病態が進行した場合には、追加給付金として再度の支給を受けることができます。
(5)請求方法
B型肝炎給付金を請求するには、国に対して訴訟を起こす必要があります。裁判所を仲介役として給付金対象の条件に該当するかどうかを確認し、国と和解すれば給付金の受給が確定します。
訴訟のときに、条件に該当することを示す証拠書類を提出する必要があります。専門性が高く、時間もかかるため、弁護士に依頼して手続きを代理してもらうのが一般的です。
6. まとめ
ここまでの解説でもお分かりかと思いますが、B型肝炎に関する助成金と給付金の一番大きな違いは、医療機関での支払免除か現金支給か、という違いです。医療費もかなり高額になることがあるので経済的メリットは大きいですが、医療費が高額ということはそれだけ病態が進んでいるということでもあり、給付金の額も更に大きくなります。
それぞれの制度はどちらかを選ぶというものではなく、両方の制度を利用することもできますので、使える制度は活用して治療や健康の維持に役立ててください。
助成金は、保健所や都道府県での役所手続きなので、住んでいる都道府県に問い合わせればその都道府県での細かい手続きをおしえてもらえます。
給付金の方は、裁判手続きで専門性も高く時間もかかるので、B型肝炎給付金に詳しい弁護士を探して依頼しなければ円滑に進めるのは難しいです。
当サイトでもB型肝炎給付金に詳しい弁護士を掲載していますので、まずは相談してみてください。