B型肝炎給付金の対象になるのはどんな人?

B型肝炎給付金が支給される対象となるのは、0~7歳時の幼少期に集団予防接種によってB型肝炎ウイルスに持続感染した人です。

給付金制度としては、以下のような条件を満たす人が対象とされています。

① B型肝炎ウイルスに持続感染していること
② 満7歳になるまでに集団予防接種等を受けていること
③ 集団予防接種等における注射器の連続使用があったこと
④ ⺟⼦感染でないこと
⑤ その他集団予防接種等以外の感染原因がないこと

必ずしも、全ての条件に明確な証拠がないとB型肝炎給付金の対象とならないわけではなく、ある程度形式的にクリアできる項目もあります。

また、対象者から母子感染した子供も、対象になります。

1. B型肝炎ウイルスに持続感染していること

まず最初の条件は、B型肝炎ウイルスに持続感染していることです。
大人になってからの感染であれば、免疫がしっかりしているのでウイルスを撃退し、一過性の感染で治りますが、免疫が未熟な幼少期にウイルスが身体に入ってくると、身体がまだウイルスをうまく認識できないので、ウイルスが体内にずっと住みついてしまいます。これを持続感染といいます。

持続感染しているかどうかは、血液検査で判断します。検査の項目や基準の数値は細かく決められています。

<必要となる資料>
以下の①または②のいずれかの場合であること

① 6か月以上の間隔をあけた連続した2時点における、以下のいずれかの検査結果
・HBs抗原陽性
・HBV-DNA陽性
・HBe抗原陽性

② HBc抗体陽性(⾼⼒価)

※ その他、医学的知⾒を踏まえた個別判断により、B型肝炎ウイルスの持続感染が認められる場合があります。

(厚生労働省「B型肝炎訴訟の手引き」より抜粋)


病院で一般的に行なう検査とは項目が違うので、B型肝炎給付金の対象である証拠として検査をする場合には注意が必要です。

 

2. 満7歳になるまでに集団予防接種等を受けていること

幼少期にB型肝炎ウイルスに感染すると持続感染になるのですが、幼少期とはいつまでなのか、という点について、B型肝炎給付金の制度では、「満7歳の誕生日の前日まで」と決められています。7歳の誕生日は小学1年生のときにくるので、小学校に入って少し経った頃までということです。
何歳で免疫がしっかりしてくるかは個人差があると思いますが、何歳で免疫がしっかりしたかを証明するのは不可能なので、対象となるのは一律に7歳までと決められています。

B型肝炎給付金は、集団予防接種で国の管理指導が不十分なため、注射器が使いまわせれたことでB型肝炎の感染が広がったことに対するいわゆる慰謝料のため、そもそも集団予防接種を受けたという証拠が必要になります。
満7歳になるまでに集団予防接種を受けたという証拠として、具体的には以下のいずれかの資料が必要です。

<必要となる資料>
以下の①から③のいずれか

① ⺟⼦健康⼿帳

② 予防接種台帳(市町村が保存している場合)

③ ⺟⼦健康⼿帳または予防接種台帳を提出できない場合は、
・その事情を説明した陳述書(親、本人等が作成)
・接種痕が確認できる旨の医師の意⾒書(医療機関において作成)
・住⺠票または⼾籍の附票(市区町村において発⾏)
※ 該当時期の予防接種台帳を保存している市区町村に居住歴がある場合で、予防接種台帳に記載がない場合は、その証明書(当該市区町村において発⾏)も必要です。

(厚生労働省「B型肝炎訴訟の手引き」より抜粋)

「そんな昔の証拠なんて残ってないよ」という人は、③に注目してください。③の書類はすべてこれから書いたり取り寄せたりすることができるものです。
押入れの奥をひっくり返して探さなくても大丈夫なのでご安心ください。

3. 集団予防接種等における注射器の連続使用があったこと

集団予防接種において注射器の交換などの指導が⾏われなかったことについて、国の責任が認められていますが、その期間は、昭和23年7月1日から昭和63年1月27日までです。
この間に7歳未満で集団予防接種を受けた人がB型肝炎給付金の対象者です。生年月日でいうと、昭和16年7月2日から昭和63年1月27日の間に生まれた人ということになります。

4. ⺟⼦感染でないこと

母親がB型肝炎ウイルスに感染していた場合、出産時に産道を通るとき母親の血液が赤ちゃんの体内に入ることで感染が起こります。出産は命がけと言いますが、大変な思いをして赤ちゃんを産むときに大切な赤ちゃんが感染してしまうなんて、なんとも言えない気持ちになります。
昭和61年以降は、出産時の母子感染予防対策が行われるようになり、赤ちゃんのB型肝炎ウイルス感染はほとんど防げるようになっています。

母子感染は、集団予防接種による感染のような人為的な事故を除けば、乳幼児期のB型肝炎ウイルス感染の一番大きな原因です。
母子感染によってB型肝炎ウイルスに感染した人は、集団予防接種による感染ではないので、国の責任を問うことはできません。そのため、B型肝炎給付金の対象となる条件として、母子感染ではないことを証明する必要があります。

<必要となる資料>
以下の①から③のいずれか

① ⺟親のHBs抗原が陰性 かつ HBc抗体が陰性(または低⼒価陽性)の検査結果
※ ⺟親が死亡している場合は、⺟親が80歳未満の時点のHBs抗原陰性の検査結果のみで可。80歳以上の時点の検査の場合は、HBs抗原の陰性化(持続感染しているが、ウイルス量が減少して検出されなくなること)が無視できない程度に発⽣することが知られているため、HBc抗体も併せて確認することが必要です。

② 年⻑のきょうだいのうち⼀⼈でも持続感染者でない者がいること(⺟親が死亡している場合に限る)

③ その他、医学的知⾒を踏まえた個別判断により、⺟⼦感染によるものではないことが認められる場合には、⺟⼦感染でないことを推認します。
〈例〉原告が双⼦の兄であり、⺟親は死亡しているが、双⼦の弟が未感染である場合

(厚生労働省「B型肝炎訴訟の手引き」より抜粋)


母親がB型肝炎ウイルスに持続感染していないという血液検査記録が証拠になります。母親が感染していないなら、母子感染は起こりようがないからです。

また、母親が既にお亡くなりになっている場合には、代わりに兄か姉の血液検査記録を証拠にすることもできます。一般的に、B型肝炎ウイルスは体内でだんだん抑え込まれていくので、早く生まれた子供の方が母子感染のリスクは高いと考えられています。兄か姉が持続感染していないなら、それより後に生まれた子供に母子感染は起きないだろうというわけです。

ただし、母子感染であれば絶対に対象にならないわけではありません。母子感染であっても母親がB型肝炎給付金の対象であれば、子供も対象になる可能性が高いです。詳しくは、6. 二次感染者をご確認ください。

5. その他集団予防接種等以外の感染原因がないこと

B型肝炎ウイルスの感染原因としては、母子感染以外にも輸血や臓器移植、家庭内での父親からの感染などがあります。これらの原因で感染した場合には、国の責任ではありませんので、B型肝炎給付金の対象とはなりません。こうした他の感染原因がないかを確認するために提出しなければならない証拠もあります。

<必要となる資料>

① カルテ等の医療記録
※ 集団予防接種等とは異なる原因が存在する疑いがないことを確認するために必要

② 父親がB型肝炎ウイルスの持続感染者である場合
→ ⽗親と原告のB型肝炎ウイルスの塩基配列を⽐較した⾎液検査(HBV分子系統解析検査)結果
※ 父親からの感染でないことを証明するために必要

③ 原告のB型肝炎ウイルスがジェノタイプAeではないことを証明する検査結果
※ 平成7年以前に持続感染が判明(初診)した場合には不要
※ ジェノタイプ検査は、成人期の感染ではないことを証明するために必要

(厚生労働省「B型肝炎訴訟の手引き」より抜粋)

6. 二次感染者

最初に集団予防接種で感染した人を一次感染者、その人から感染した人を二次感染者といいます。

一次感染者としてB型肝炎給付金の対象になる人が妊娠、出産して、子供に母子感染した場合は、子供もB型肝炎給付金の対象になります。母親が感染したのは国の責任で、それがなければ子供にも感染することはなかったので、子供の感染も国の責任ということです。

母子感染した人は、一次感染者としてはB型肝炎給付金の対象になりませんが、母親が一次感染者として対象であれば、二次感染者として対象になる可能性はあります。
母子感染した二次感染者がB型肝炎給付金の対象と認められる条件は次のとおりです。

 ① 母親が一次感染者として1~5までの条件をすべて満たしていること
 ② 子供がB型肝炎に持続感染していること
 ③ 母子感染であること


他にも、次のようなケースがB型肝炎給付金の対象となります。

  • 父親が一次感染者として給付金対象者で、その父親から感染した人(父→本人)
  • 祖母が一次感染者として給付金対象者で、その祖母から母子感染した母親から、さらに母子感染した人(祖母→母→本人)
  • 祖母が一次感染者として給付金対象者で、その祖母から母子感染した父親から感染した人(祖母→父→本人)

7. まとめ

B型肝炎給付金の対象は、一言でいうと「幼少期の集団予防接種等で感染した人」ですが、実際に認められるためには細かい条件を満たし、証拠を出す必要があります。

証拠を集める際には専門的な知識が求められるときもあり、二次感染も含めて判断しなければならないケースもあります。一つずつ丁寧に確認しながら進めていきましょう。

自分で進める自信がない人や、長時間取り組む時間がない人は、弁護士に依頼するという方法もあります。B型肝炎給付金の請求を取り扱っている弁護士なら、専門知識で効率よく進めてくれます。

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