費用倒れで損しない? B型肝炎訴訟の弁護士費用
B型肝炎訴訟を検討している方の中には、「興味はあるけど弁護士費用が高くて逆に損するんじゃないか?」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。また、「手続きした挙句に給付金をもらえなかったら、弁護士費用だけとられるんじゃないか?」という不安を感じている方もいらっしゃると思います。
結果的に給付金をもらった場合は、費用倒れになることはありません。
給付金をもらえない場合、それまでに払った費用は無駄になってしまいますが、手続きの進め方によって出費を最小限に抑えることは可能です。
今回は、弁護士費用やその他の費用など、B型肝炎訴訟をしたときにかかる費用の種類や金額と、費用倒れの可能性や自己負担金額について検証していきます。
[目次]
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- B型肝炎訴訟に必要な費用
(1)弁護士費用(2)訴訟費用
(3)検査費用やカルテ取得費用
(4)戸籍などの公文書取得費用
- B型肝炎訴訟での費用倒れの可能性
- 給付金がもらえるかの判断に必要な資料
- 給付金がもらえなかったときの自己負担額
- まとめ
- B型肝炎訴訟に必要な費用
1. B型肝炎訴訟に必要な費用
B型肝炎給付金をもらうまでに資料収集などで必要な金額は人によってかなり異なります。
少なければ数千円程度で済みますが、特殊な検査が必要になったり、カルテが大量にある場合だと、10万円を超えることもあります。
B型肝炎訴訟に必要な費用を大きく分けると、弁護士費用、訴訟費用、証拠収集費用の3つになります。
証拠収集費用は取得する証拠の種類から、医療関係の検査費用やカルテ取得費用と、役所関係からの戸籍などの公文書取得費用に分けられます。
こうした費用がどういうもので、いくらくらいになるのか、1つずつ見ていきます。
(1)弁護士費用
B型肝炎訴訟の全ての手続きを自分でやれば、弁護士費用はかかりません。
しかし、B型肝炎訴訟は法律と医療それぞれの専門的知識が必要になり、普通の人が全て自分で行なうのは現実的ではありません。
また、弁護士に依頼して給付金をもらった場合は、国から弁護士費用の補助として給付金の4%相当額が支給されます。弁護士費用の全額を負担しなくてもいいことも考えると、弁護士に依頼した方がお得になると言えます。
具体的な弁護士費用は、各弁護士や法律事務所によって違いますが、B型肝炎訴訟を専門に扱っている法律事務所では成功報酬制をとっているところが多いです。「受け取った給付金額の○%」というパターンをよく目にしますが、これが成功報酬です。固定額でいくらという成功報酬もありますが、当然ながら給付金よりは低い金額になっています。
ここで注意していただきたいのは、「受け取った給付金額の○%」というケースで、国から支給される4%の訴訟手当金の扱いがどうなっているのかという点です。
3600万円の給付金を受け取れるケースで、成功報酬が14%だった場合を例にしてご説明します。話を簡略化するため消費税はないものとして考えます。
国から支給される4%を含めて14%である場合
弁護士報酬 504万円(給付金×14%)
依頼者の手元に入る金額 3240万円(給付金から10%を差し引いた金額)
弁護士報酬は14%、給付金から引かれるのは実質10%ということになります。
国から支給される4%を別にして14%である場合
弁護士報酬 648万円(給付金×18%)
依頼者の手元に入る金額 3096万円(給付金から14%を差し引いた金額)
弁護士報酬は18%、給付金から引かれるのは実質14%ということになります。
上記の例のように、弁護士が受け取る金額にフォーカスするか、依頼者が受け取る金額にフォーカスするかで表現が違ってきます。 弁護士費用について間違えやすいポイントなので、よく確認するようにしましょう。
ただ、いずれにせよ、成功報酬が給付金より多くなることはありません。
特殊な事情があって普通より難しい訴訟になるケースや、給付金の額が予測できないようなケースでは、特別に着手金などが発生することもあるようですが、そういった場合でも必ず弁護士から詳細な説明があるはずです。
(2)訴訟費用
訴訟費用とは、裁判所で訴訟をするのにかかる費用のことです。
まず、訴状に貼る印紙代があります。これは訴訟で請求する金額に応じて決められています。給付金を請求した場合にかかる印紙代は以下のとおりです。
病態 | 除斥期間20年 | 給付金額 | 印紙代 |
---|---|---|---|
死亡、肝がん、重度肝硬変 | 経過前 | 3600万円 | 12万8000円 |
死亡、肝がん、重度肝硬変 | 経過後 | 900万円 | 4万6000円 |
軽度肝硬変 | 経過前 | 2500万円 | 9万5000円 |
軽度肝硬変 | 経過後、治療中 | 600万円 | 3万4000円 |
軽度肝硬変 | 経過後、治癒済み | 300万円 | 2万円 |
慢性肝炎 | 経過前 | 1250万円 | 5万9000円 |
慢性肝炎 | 経過後、治療中 | 300万円 | 2万円 |
慢性肝炎 | 経過後、治癒済み | 150万円 | 1万3000円 |
無症候性キャリア | 経過前 | 600万円 | 3万4000円 |
無症候性キャリア | 経過後 | 50万円 | 5000円 |
他にも訴訟をするときには裁判所に対して郵便切手を納めなければなりません。これを予納郵券といいます。訴状の写しを相手方に送るときなど、様々な場面での書類の郵送に使われます。訴訟が終わって余っているものがあれば返してもらえます。
どこの裁判所で訴訟を起こすかによって金額は多少異なりますが、例えば、東京地方裁判所で原告1名で訴訟を起こす場合なら6,000円分が必要になります。
ただ、訴訟費用は依頼する弁護士によっては立替えてくれることもあります。訴訟を起こす段階までくれば給付金がもらえる可能性は非常に高いので、成功報酬と一緒に精算しても問題ないということです。
(3)検査費用やカルテ取得費用
B型肝炎訴訟において、給付金をもらえる条件に当てはまっていることを証明するため、様々な証拠書類を提出しなければなりません。そのなかでも検査記録やカルテなどの医療記録は重要です。
病院などの医療機関から取得するため、内容や分量によっては高額になるケースもあります。原則として全て自己負担なので、高額なものは給付金対象となる目処がある程度たってから取得するようにしましょう。
一部の検査費用は給付金と一緒に支給されます。ただし、給付金の対象と認定されなかった場合は検査費用も支給されず、自己負担となります。
人によって状況が違うため、必要になる資料も状況に応じて変わってきます、具体的には以下のような証拠書類が必要になります。下記に挙げたものが必ずしも全て必要になるというわけではありません。
・B型肝炎ウイルスに持続感染していることを示す血液検査の記録
保険適用で1,000円から3,000円程度です。保険適用外だと10,000円近くかかります。
父親の血液検査は領収書があれば給付金と一緒に請求できます。
・接種痕意見書
皮膚に予防接種を受けた痕があることを確認した医師の意見書です。
目安としては、1,000円から5,000円程ですが、病院により異なります。
・病態にかかる診断書
肝疾患を発症している場合の診断書です。
目安としては、5,000円から10,000円程ですが、病院により異なります。
・カルテなどの医療記録
肝疾患の発症状況などにより、必要な期間や範囲が決まっています。
病院により開示費用は様々で、カルテ量も人によって違うので金額は一概に言えません。
目安としては、開示費用が0円から10,000円程、コピー代が1枚10円から30円程です。
CD-Rなどのデータで受け取れる場合もあります。
・ジェノタイプ検査
B型肝炎ウイルスの遺伝子型を調べる検査です。
保険適用で3,000円程度、保険適用外だと8,000円から10,000円程です。
給付金が支給されるときに、保険適用で2,300円、保険適用外で8,500円が支給されます。
保険適用外の場合は領収書が必要です。
・サブジェノタイプ検査
B型肝炎ウイルスの遺伝子型をさらに詳しく調べる検査です。
保険適用にはならず、10,000円から20,000円程です。
給付金が支給されるときに、15,000円が支給されます。
・HBV分子系統解析検査
B型肝炎ウイルスの塩基配列を比較する検査です。
父子感染が疑われる場合や母子感染を証明したい場合に行なう検査です。
保険適用にはならず、数万円かかります。
給付金が支給されるときに、65,000円が支給されます。
(4)戸籍などの公文書取得費用
幼少期に日本で集団予防接種を受けた可能性があるかどうかを確認するため、戸籍や住民票などの公文書が必要になります。
こちらも医療記録と同様に、下記に挙げたもの全てが必ずしも必要になるというわけではありませんが、一例として挙げておきます。
・母子健康手帳
集団予防接種を受けた記録があるかどうかを確認します。
生まれたときのものが残っていれば証拠資料になります。取得費用はかかりません。
・戸籍事項証明書または戸籍謄本
家族関係などを確認します。
取得費用は450円です。除籍や改製原戸籍の場合は750円になります。
・戸籍の附票、住民票
幼少期に日本に住んでいたことを確認します。
取得費用は市区町村によって異なりますが、300円程度です。
・小学校の卒業証明書
幼少期に日本に住んでいたことを確認します。
卒業証書や卒業アルバムでも代用できます。取得費用はかかりません。
2. B型肝炎訴訟での費用倒れの可能性
B型肝炎訴訟では、請求が通って給付金をもらえれば費用倒れになるということはありません。
一般的な訴訟だと、勝訴しても相手方がお金をもっていなければ、お金を回収することはできませんし、弁護士費用や訴訟費用だけを無駄に払わないといけないということになります。その点、B型肝炎訴訟の相手方は国なので、給付金対象と認められて和解できれば、給付金は確実にもらえます。給付金がもらえれば、弁護士費用やその他の費用を全て払っても充分おつりがきます。
しかし、給付金対象と認められず和解できなかった場合は、既に払った費用は自腹を切ることになります。ただ、弁護士費用についてはB型肝炎訴訟の着手金や相談料はとらないという法律事務所が多いので、給付金はもらえないのに弁護士費用だけかかるということはほぼありません。
給付金をもらえないケースで回収不能となる費用は、その時点で既に支払った検査費用などです。訴訟のためにする検査の費用は自分で払うことになるため、給付金をもらえないと自己負担のまま手続き終了することになります。
そのため、まずは給付金対象となる見込みがあるかどうかの判断に必要な検査や資料収集だけを先に行なって、万一ダメだったときの自己負担額をできるだけ少なくしておくのが得策です。そして、見込みがありそうなら他の検査や資料取集も追加していくことで、高額な検査などが空振りになるリスクを下げることができます。
3. 給付金がもらえるかの判断に必要な資料
給付金の対象外になる原因で多いのは、以下のようなものです。
・B型肝炎ウイルスに持続感染していない
・母子感染を否定できない
・国の責任が認定されている時期の集団予防接種を受けていない。
これらに当てはまらないことを先に確認することが、請求できない場合の自己負担額や労力を少なくすることにつながります。
具体的には、本人や母親の血液検査結果、母子手帳や接種痕意見書などで確認します。
給付金をもらえないケースの大部分は、これらの資料を確認することで判断できるので、必ず一番最初にに確認すべきです。これらの資料で問題がないことを確認してから、その他の資料収集を始めていきましょう。
4. 給付金がもらえなかったときの自己負担額
前章の資料を優先して確認した結果、給付金をもらえないことが確認された場合、その時点での費用は自己負担することになります。その金額はいくらになるのでしょうか。
血液検査は、保険適用で1,000円から3,000円程度、保険適用外で10,000円程度です。保険適用されるかどうかは本人の状況や病院にもよります。近い時期にたまたま同様の検査をしていれば検査費用がかからないケースもあります。
接種痕意見書は、病院によって異なりますが1,000円から5,000円程です。
母子手帳は残っていれば費用はかかりません。
一概には言えませんが、合計で多くても20,000円から30,000円といったところでしょうか。
保険適用外になると高くついてしまいますが、給付金の額は桁違いに大きいので、自腹を覚悟で確認してみる価値はあると思います。
5. まとめ
繰り返しになりますが、B型肝炎訴訟は給付金がもらえれば費用倒れはないので、給付金がもらえない場合に無駄になる自己負担額をできるだけ少なくするように進めるのがポイントです。
そして、そういう進め方をするには、B型肝炎訴訟の経験豊富な弁護士に依頼するのが一番確実です。ノウハウをもった弁護士なら、まず最小限の費用で請求可能かどうかを確認した上で本格的な手続きを開始するかどうかを判断してくれます。そういった弁護士であれば、ちょっと相談しただけで相談料をとられるということもないので安心できます。
相談したら手続きを始めないといけないということもないので、まずは気軽に一度相談してみることをお勧めします。