B型肝炎の給付金について

B型肝炎の給付金とは、幼少期の集団予防接種によってB型肝炎ウイルスに感染した人に、国から給付金という名目で支給されるお金です。国に対して訴訟を起こし、和解することで最大3600万円の給付金を受け取ることができます。

1. 集団予防接種による感染

子供の頃に、学校や自治体などで集団予防接種を受けた記憶のある方は多いと思います。
学校のクラスや地域の子供達が一か所に集められて、順番に予防接種の注射を打たれていくあれです。子供心に注射が怖くて順番が近づくにつれて恐怖心を募らせたりしたことが、想い出に残っているのではないかと思います。
こういった集団予防接種は、国民全体の健康を守るために国が主導して実施しています。子供達にとっては恐怖のイベントですが、恐ろしい病気を未然に防ぐためには大切なことです。

集団で医療行為を行なうということは、医療事故や衛生上の問題があったときの影響も大きくなります。したがって、集団予防接種を実施する際には、注射器や医療器具の取り扱い、注射をしていく手順や方法について、きっちりと管理する必要があります。

しかし、昔は国の管理監督が不充分で、前の人に使った注射器をちゃんとした消毒もしないまま次の人に使うというようなことが行われていたそうです。言うまでもありませんが、注射器を使いまわすと、誰かが病気を持っていた場合、その後の人にその病気がうつってしまうリスクがあります。
それが原因で、日本全国で多くの人がB型肝炎ウイルスに感染してしまいました。その数は40万人以上とも言われています。
国民の健康を守るための集団予防接種で、逆に病気になってしまっては元も子もない話です。

大人になってからB型肝炎ウイルスに感染しても、免疫の働きで撃退するため、一過性の感染で済みます。しかし、幼少期の免疫が弱い時期に感染すると、ウイルスがずっと身体に住みついてしまいます。これを、持続感染と言います。集団予防接種は幼少期に受けますので、注射器の使い回しによりB型肝炎ウイルスの持続感染になります。そのため、現在でも多くの人が、体内にB型肝炎ウイルスが残っている状態になっています。

2. なぜ給付金がもらえるのか

集団予防接種によるB型肝炎ウイルス感染は、そもそも国がきちんと管理指導していれば起こらなかったはずです。
今ほど医学が発達していない頃の話かもしれませんが、注射器の使い回しが危険なことは、当時も海外で報告されていたそうです。国のほうでもその危険性は認識しながら、充分な対策をとらなかった、と指摘する声もあります。(※1)

したがって、集団予防接種によるB型肝炎ウイルス感染の拡大は、国に責任があります。
そして、感染した人は国のせいでB型肝炎ウイルスに感染したわけですから、国に慰謝料を払ってもらうのが当然です。そういう趣旨で国から支払われるお金を、B型肝炎給付金といいます。

3. 給付金はどうやって請求する?

実際に国から給付金をもらうには、なかなか面倒な手続きが必要です。
集団予防接種によってB型肝炎ウイルスに感染した人が給付金の対象者なのですが、それを判断するためにいくつかの条件や基準があります。
そして、その条件や基準を満たしているかどうかは、自分で調べて証明しなければなりません。国の不手際で感染してしまったのに、給付金を請求するときにも自分で証明しないといけないのは、なかなか理不尽な気もしますが、現状ではそういう制度になっています。

自分がB型肝炎給付金の対象となる条件を満たしていることを確認できたら、それを国に認めてもらうために、国を相手に訴訟を起こして給付金を請求する必要があります。そして、その訴訟の中で、自分が給付金の対象者であることを主張し、それを示す根拠となる医療記録(カルテ)や公的記録等を、裁判の証拠として提出します。

国を相手に訴訟を起こすというと、大変なことのように感じられるかもしれませんが、裁判所に仲介してもらうためにそういう仕組みになっているので、「国と争う」と思って身構えなくても大丈夫です。(※2)

そして、提出した証拠を国が確認した結果、B型肝炎給付金の対象者だと認めれば、国から給付金に関する和解案が出てきます。
その和解案に応じて、裁判上で和解すれば、B型肝炎給付金を受け取る権利が確定します。
和解して訴訟が終わると、和解の内容に基づいて裁判所から和解調書が送られてきます。これが給付金を受け取るための証明書のようなものです。
給付金の支払を実際に行っているのは、社会保険診療報酬支払基金という機関です。ここに対して、和解調書を元に請求することで、給付金を受け取ることができます。

4. 給付金請求って大変?

ここまで読んでいただいて、「給付金を請求するのって大変そう」と思われたのではないでしょうか。たしかに、B型肝炎給付金の手続きはかなり大変です。

しかし、この大変な手続きを代わりにやってくれるプロがいます。それは弁護士です。
B型肝炎給付金請求を手掛けている弁護士に依頼すれば、大変な部分は弁護士がやってくれるので、かなり楽に進められます。弁護士に必要な書類を渡せば、あとはただ待っていればOKです。
弁護士をうまく使うことが、B型肝炎給付金請求を効率よく進めるポイントです。

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【更に詳しく知りたい方へ】

※1
厚生労働省によると、予防接種の際の注射器の交換については、昭和33年から注射針を、昭和63年から注射筒を、予防接種を受ける人ごとに取り替えるよう指導を徹底しているとのことです。完全に対応されたのがかなり最近の年代で、対応が遅かったというのもうなずけます。

 

※2
かつては、国も集団予防接種によるB型肝炎ウイルス感染の責任を認めておらず、B型肝炎訴訟は原告と国との争いでした。
国に対する損害賠償請求を求めて全国でいくつかの集団訴訟(B型肝炎訴訟)が起こされていました。この訴訟は、裁判所の仲介によって和解の協議が進められた結果、平成23年6月に、原告と国(被告)との間で基本的な合意が成立し、「基本合意書」とその運用について定めた「覚書」が締結されました。
さらに、今後にB型肝炎訴訟を起こす方への対応も含めた全体的な解決のために、新しい法律として「特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法」が成立、平成24年1月13日から施行されることで、裁判上の和解等が成立した方に対して、給付金等が支給されることになりました。

これにより、出口の見えない訴訟であったB型肝炎訴訟に一つの解決基準ができ、集団予防接種によってB型肝炎に感染してしまった多くの人が、B型肝炎訴訟を起こして給付金を請求できるようになりました。

しかし、その時点ではまだ給付金請求に基準ができていないケースもありました。
死亡、肝がん、肝硬変(重度)、肝硬変(軽度)の方で、給付金請求の除斥期間(時効のようなもの)の20年が経過してしまった方についてどのように取り扱うかは、「基本合意書」や「特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法」の中に定められていなかったのです。
その後、平成27年3月になって、原告と国(被告)との間で「基本合意書(その2)」が締結されて合意が成立しました。そして、除斥期間(20年)を経過した死亡、肝がん、肝硬変(重度)、肝硬変(軽度)の方に対しても給付金を支給することを規定した「特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法の一部を改正する法律」が平成28年8月1日に施行されました。

こうしてようやく、B型肝炎訴訟を起こして給付金を請求しやすくなる状況がととのってきたと言えます。