B型肝炎の無症候性キャリアだとわかったら知っておくべきこと
B型肝炎とは、B型肝炎ウイルスに感染することが原因で引き起こされる肝臓の疾患です。
ウイルスを体内に抱えている状態をキャリアといいます。B型肝炎の場合、感染していても肝臓に症状が出ていないことも多く、そういったものを無症候性キャリアといいます。
B型肝炎ウイルスのキャリアと診断された方は、いつどこで感染したのか、家族や友人などを感染させてしまわないか、いずれ発症するのか、など不安なことも多いことと思います。
今回は、感染の仕組み、発症リスクや定期検査のことなど、B型肝炎ウイルスキャリアの方が知っておくべきことを解説します。
1. 主な感染経路
B型肝炎ウイルスは、大人になってから感染しても症状も出ずに一過性で終わることがほとんどです。たまに急性肝炎を発症する人もいますが、その場合でも治癒すればウイルスは体から排除され、その後はB型肝炎ウイルスに対する免疫ができます。
しかし、免疫機能が未熟な乳幼児や、他の病気で免疫を抑制する薬を飲んでいる人などがB型肝炎ウイルスに感染すると、身体がウイルスをうまくウィルスを認識できず、体内にウイルスがずっと残ってしまう状態になります。これを持続感染といい、この状態をキャリアと呼びます。
ただし、近年では欧米型のB型肝炎ウイルスが増えてきているという報告があり、この種類のウイルスでは大人になってからの感染でもキャリアになることがあります。健康な大人であれば絶対に持続感染しないというわけではないため、注意が必要です。
そういった例外はありますが、キャリアの方のほとんどは、乳幼児期に感染していると考えられます。そして、感染経路としては、母子感染と集団予防接種による感染があります。
母子感染とは、母親がB型肝炎ウイルスのキャリアであった場合、出産時に母から子へと感染することです。
集団予防接種による感染とは、幼少期に集団予防接種を受けたとき、注射器が使い回しされていたことによりB型肝炎ウイルスに感染することです。
集団予防接種による感染の場合には、B型肝炎給付金や、定期検査費用などの補助を受け取ることができます。詳しくは、5. B型肝炎給付金をご確認ください。
2. 発症リスク
ご本人やご家族がB型肝炎のキャリアと診断された方は、肝炎を発症するのではないかと不安に感じていらっしゃると思います。
B型肝炎ウイルスの場合、キャリアの方の90%近くは肝炎を発症しないか、発症しても軽度で済みます。しかし、10%程度の方は慢性肝炎を発症し、肝硬変や肝がんへ進行してしまう可能性があります。
多くの方はリスクが表に出ずに終わるということですが、重い症状が出る可能性も無視できるものではありません。
3. 家族への感染防止
B型肝炎はウイルスによって引き起こされる肝炎ですが、ウイルスが原因のインフルエンザなどと同様に人に感染します。したがって、B型肝炎ウイルスキャリアの方から、感染していないご家族やご友人への感染が起こらないよう気をつける必要があります。
B型肝炎ウイルスの感染は、血液や体液の接触を通して感染します。経口感染や空気感染はしません。
感染防止のために日常生活に大きな影響はありませんが、感染経路となりそうなところには気をつけましょう。
- 歯ブラシやカミソリなどは他人と共有しない。
- トイレの後は、流水で手をよく洗う。
- 乳幼児に口移しで食べ物を与えない。
- 血液が付着したものは、よく洗い流す。そのまま捨てるときは、接触しないように包んで捨てる。
- 出血したときはできるだけ自分で処理する。他人の手を借りる場合は血液がつかないよう注意し、よく洗う。
- 病院や歯科に行ったときは、B型肝炎のキャリアであることを告げる。
- 性交渉のパートナーには事前にワクチンを接種してもらう。
- ピアスや刺青、麻薬の注射などには関わらない。
母子感染については、現在では出産時にワクチンを投与するなどの母子感染防止措置がとられているため、感染することはほとんどなくなっています。
注射や輸血などの医療行為による感染も、現在では改善されています。
ご家族が感染していないか心配で検査したいときは、ほとんどの病院で血液検査に対応しています。また、市区町村で実施している無料の検査や、職場の健康診断でも検査できます。
B型肝炎給付金の対象となったキャリアの方であれば、母子感染や家族内感染を防止するための検査やワクチンの費用で補助を受けられる可能性が高いです。詳しくは、5. B型肝炎給付金をご確認ください。
4. 定期検査
B型肝炎ウイルスキャリアの方の発症確率は高くありませんが、万一発症したときには早期発見・早期治療が必要です。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、悪くなり始めても自覚症状が出にくいので、定期的に検査して異常があればすぐに治療を開始できるようにしましょう。
検査の頻度は医師の判断によりますが、概ね2ヶ月から3ヶ月に一度は検査に行くことになります。
定期検査の費用負担も小さくはないですが、B型肝炎給付金の対象となったキャリアの方であれば、ほとんどの方が定期検査費用や定期検査手当てといった補助を受けることができます。詳しくは、5. B型肝炎給付金をご確認ください。
5. B型肝炎給付金
幼少期の集団予防接種によってB型肝炎に感染した方は、国からB型肝炎給付金が支給されます。感染して症状の出ていない無症候性キャリアの方なら、感染から20年以上経っていれば給付金額は50万円、感染から20年経っていなければ給付金額は600万円です。
しかし、無症候性キャリアでB型肝炎給付金の対象となる方は、ほとんどが感染から20年経過しています。
50万円という金額を多いと考えるか少ないと考えるかは人それぞれですが、感染後20年経過した無症候性キャリアの方には給付金額以上に大きなメリットがあります。
まず、今後の定期検査費用が継続的に補助されるなど、実費面でのメリットがあります。
(1) 定期検査やそれにともなう診療などの費用
(2) B型肝炎ウイルスの母子感染を防止するための費用
(3) 同居の家族へのB型肝炎ウイルス感染を防止するための費用
(4) 定期検査手当として(1)の定期検査1回につき1万5千円(年2回まで)
給付金を受け取るときに受給者証が交付され、病院の窓口で提示すると検査費用を負担しなくてよくなります。受給者証の交付前に検査していた場合は、後から請求すると検査費用相当の金額が振り込まれます。
また、給付金を受け取った後に肝炎が発症してしまった場合、病態に応じた給付金を後から受け取ることができます。
B型肝炎給付金には請求期限があり、2022年(平成34年)1月12日までに請求する必要がありますが、これは1回目の請求の期限であり、病態が進んだことによる追加請求にはこの期限は適用されません。病態が進んだことを知ってから3年以内に請求すれば大丈夫です。
発症してから初めて給付金をもらおうとしても請求期限が過ぎている可能性がありますが、無症候性キャリアで1度もらっておけば安心です。
給付金の手続きは相当に大変で時間もかかります。追加請求の方がかなり楽に手続きできますので、発症してから身体に負担をかけないためにも、無症候性キャリアのうちに1回目の請求手続きをしておきましょう。
B型肝炎ウイルスキャリアの方は生命保険の審査も厳しくなりますので、給付金を保険代わりに考えてみるのもいいかもしれません。
6. まとめ
B型肝炎ウイルスキャリアの方が知っておいた方がいいことをご紹介しました。
大きく分けて、家族などへの感染予防と、発症への備えが重要なところかと思います。
そうしたことへの資金面の一助として、B型肝炎給付金の請求についてもご案内しました。給付金の請求手続きは相当に大変なものではありますが、弁護士に依頼することでかなり楽に進めることができます。自分が給付金の対象になるのかどうかといったことも、弁護士に相談できます。今後の大きな備えにもなりますので、この機会に一度ご相談されることをお勧めします。