妊娠時の検査でB型肝炎と判明 赤ちゃんへの影響は?

妊娠して産婦人科へ行くと、妊婦健診で様々な感染症の検査をします。これは、赤ちゃんに影響する可能性のある感染症を早期に発見して対応するためです。
妊婦健診でB型肝炎といわれた方は、突然のことにびっくりしたり不安になったりしていることと思います。B型肝炎は怖い病気ではありますが、今は医療も法制度も整っているので、正しい知識をもって対応すれば恐れることはありません。現在では母子感染率も非常に低くなっています。
この記事では、B型肝炎のことや赤ちゃんへの影響、出産後に気をつけることなどを解説しています。

妊娠中に不安なままで過ごすのは赤ちゃんにもよくありません。この記事が不安を取り除くきっかけとなり、読んでいただいた方が幸せな妊娠生活をおくれるよう願っています。

1. B型肝炎とは

B型肝炎とは、B型肝炎ウイルスによって引き起こされる肝臓の病気です。B型肝炎が進行すると、肝硬変や肝がんになる可能性もあります。

妊婦健診の検査項目の中に、B型肝炎抗原というものがあります。検査記録にはHBs抗原検査と書かれているかもしれません。これはB型肝炎ウイルスに感染しているかどうかを調べる検査です。B型肝炎ウイルスに感染していても症状が出ていないこともあるので、妊婦健診で初めて感染していることを知った方もいらっしゃると思います。

B型肝炎ウイルスの感染には、一過性感染と持続感染があります。持続感染で症状の出ていない人はキャリアともいいます。
大人になってからの感染は、通常は一過性感染になり、症状も出ずに終わることが多いです。急性肝炎を発症する場合もありますが、治癒すれば身体からウイルスが排除されます。そして、B型肝炎ウイルスに対する免疫ができます。
一方、乳幼児のときに感染すると、免疫が未熟なのでB型肝炎ウイルスを認識することができず、体内にウイルスがずっと残ってしまいます。これが持続感染です。

妊婦健診で初めてB型肝炎ウイルス感染が判明したのであれば、その時点では一過性感染なのか持続感染なのかがはっきりわからないかもしれません。出産後の対応にも関係してくるので、いずれにせよ医師の指示を仰ぎ、できれば産婦人科とは別に内科、できれば肝臓専門医の診察を受けておいた方がよいでしょう。一過性感染でも持続感染でも、現時点で肝炎を発症している可能性はあります。肝臓の病気は自覚症状がないことも多いので専門医にきっちり診てもらった方が安心です。

持続感染している場合は、今現在、肝炎を発症していなかったとしても、将来的に発症する可能性があります。キャリアの方の90%はそのまま肝炎を発症しないか、発症しても軽度で済みますが、10%程度の方は慢性肝炎を発症し、経過によっては肝硬変や肝がんになることがあります。早期発見・早期治療のためにも定期検査を継続して受けましょう

2. B型肝炎ウイルスの母子感染  

母親がB型肝炎ウイルスに感染していると、赤ちゃんへ母子感染するリスクがあります。母子感染とは、妊娠中や出産時、乳児期などに母親から赤ちゃんへウイルスなどが感染することです。

妊娠中、出産時、出生後のそれぞれに母子感染の可能性はありますが、母子感染のほとんどは出産時の産道感染です。しかし、現在では出産直後に母子感染防止の処置をすることで、母子感染はほとんど起きなくなっています。医師の診断に従っていれば、それほど心配する必要はないと思いますが、念の為、母子感染の仕組みについて解説しておきます。

細かい仕組みを知ることで不安がましてしまいそうな方は、読み飛ばして「3. 出産後の赤ちゃんとの接し方」へ進んでください。


赤ちゃんが生まれてくるとき狭い産道を通り抜けるため、細かい擦り傷ができるのですが、この傷から赤ちゃんの体内に母親の血液が入ることで感染が起こります。これを産道感染と言います。
かつてはこの感染を防ぐ方法がなく、90%程度は母子感染が起こっていましたが、昭和61年から母子感染防止措置がとられるようになり、今ではほぼ全てを防げるようになっています。

生後12時間以内に、B型肝炎免疫グロブリン製剤という免疫の中のB型肝炎ウイルスを攻撃する抗体を集めたものを赤ちゃんに投与して持続感染を防ぎ、同時にB型肝炎ウイルスワクチンの接種も行なって赤ちゃんに免疫を作ります。生まれてすぐに注射をされるなんて可哀想だと思うかもしれませんが、この処置で多くの赤ちゃんが感染から守られて元気に育っています。こういう方法が確立されているのはとても幸運なことだと思います。

産道感染以外の母子感染は、B型肝炎ウイルスでは基本的には起こりません。
妊娠中は、母親の血液と赤ちゃんの血液は胎盤によって分けられているので接触がありません。母子感染リスクはほとんどありませんが、非常に低い確率として、胎盤に小さな傷ができたりするとそこからほんの少しの血液が入って感染する可能性はあります。
出生後は、母乳から感染しないのかが心配になると思いますが、これは母子感染防止措置が行われていれば、基本的に問題ないとされています。ただし、乳頭に傷や出血があるときは、授乳を控えた方がいいようです。

いずれも通常はあまり心配する必要はありませんので、医師の指示に従っていれば大丈夫です。

3. 出産後の赤ちゃんとの接し方  

赤ちゃんに出生後の母子感染防止措置を行なった後は、生後1ヶ月と生後6ヶ月の定期的なワクチン接種が必要です。生後9ヶ月から12ヶ月頃には、母子感染がちゃんと防止できたかどうかを確認する検査もあります。適切な時期にきちんと処置を受けられるように、産婦人科の医師と小児科の医師に指導を受けましょう。
また、母子感染の仕組みのところにも書きましたが、乳頭に傷や出血があるときは、授乳を控えましょう

万が一、母子感染防止がうまくいかなかった場合は、赤ちゃんに接する人が、赤ちゃんからB型肝炎ウイルスに感染しないように気をつけなければなりません。
B型肝炎ウイルスは、血液や体液の接触によって感染し、経口感染や空気感染はしません。下記のようなことに注意しましょう。

  • 赤ちゃんの血液や体液に素手でさわるときは、手に傷がないか確認し絆創膏などで手当てしておく。
  • 赤ちゃんの体に傷や湿疹ができて血液や滲出液が出ているときは、ガーゼや服などでおおってあげる。
  • 赤ちゃんの顔やよだれを拭く布は、赤ちゃん専用にして他の人が使わないようにする。
  • 赤ちゃんの排泄物や汚れたおむつは普通に処理し、手洗いをしっかりする。


父親や他の家族など、赤ちゃんと接する人はB型肝炎ワクチンを接種しておいた方がいいです。ワクチン接種は、お母さんから他の家族への感染予防の点でも効果があります。

もしご自身がキャリアで、B型肝炎給付金の対象となっていれば、母子感染や家族内感染を防止するための検査やワクチン費用などで補助を受けられます。詳しくは、「5. B型肝炎給付金」をご確認ください。

4. 母親がキャリアだったとき

お母様自身が一過性感染ではなく、B型肝炎ウイルスのキャリアだったときは、家族への感染予防と今後の定期検査を考える必要があります。

家族への感染予防は、母子感染防止できた赤ちゃんに対しても必要ですし、父親や他の同居家族に対しても必要です。赤ちゃんとの接し方のところでも書いたように、B型肝炎ウイルスは血液・体液の接触で感染します。感染経路となりそうなところには気をつけましょう。同居のご家族のワクチン接種も効果的です。

また、今後の定期検査を必ず継続しましょう。
肝臓は悪くなり始めても自覚症状が出にくいです。症状が出て気づいたときにはB型肝炎がかなり進行していた、ということにならないためにも、定期検査を継続して異常があればすぐに治療できるようにすることが大切です。

検査費用の負担もありますが、B型肝炎給付金の対象となったキャリアの方なら、定期検査に関する補助を受けることができます。

5. B型肝炎給付金  

ご自身がキャリアだったとなると、いつどこで感染したのかが気になるかと思います。
考えられるのは、母子感染か幼少期の集団予防接種です。

昭和63年までは集団予防接種で注射器の使い回しが行われていた可能性があり、それが原因で感染した方がかなりの数になります。国の管理責任があるため、そうした方にはB型肝炎給付金という名目のお金が国から払われます。
集団予防接種が原因ではなく母子感染の場合でも、ご自身のお母様が集団予防接種で感染していれば給付金の対象になります。

B型肝炎給付金の請求手続きは、専門的な知識が必要でかなり大変なので、弁護士に任せるのがお勧めです。まずは弁護士に相談してみて、給付金の対象になりそうなら弁護士に依頼し、あとは子育てに専念しましょう。

6. まとめ  

B型肝炎、母子感染、出産後の注意点などをご説明しました。

母子感染についてはあまり心配はいらないかと思いますが、ご自身のB型肝炎ウイルス感染については今後も気をつけていかなければなりません。この記事が少しでも参考になれば幸いです。

また、出産後は時間的にも金銭的にも負担がどんどん増していきます。B型肝炎給付金などを活用しつつ素敵なママライフをお過ごしください。

まずは給付金対象か再確認してみましょう>>