肝炎の原因にはどんなものがある?
肝炎というと、お酒の飲み過ぎというイメージをもたれることがあります。
しかし、実際に肝炎患者の方にお会いすると、いわゆる大酒飲みというタイプの人はあまりいません。
肝炎の原因とアルコールには、本当に関係があるのでしょうか?
今回は、肝炎を引き起こす真の原因についてご説明します。
1. 肝炎の3大原因
肝炎の原因として主なものは、以下の3つです。
・ウイルス
ウイルス感染が原因となって起こる肝炎を、ウイルス性肝炎といいます。ウイルスの種類は複数あり、日本では、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスが問題となっています。
肝炎の原因の中で一番多くを占めるのが、このウイルス性肝炎です。
・アルコール
アルコールを大量に摂取することで起こる肝臓の病を、アルコール性肝障害と呼びます。
「肝炎」ではなく「肝障害」と書いたのは、脂肪肝など肝炎以外の疾患も含まれるためです。
・肥満などの生活習慣
アルコール摂取がなくても肝臓に脂肪が溜まって障害が起こることを、非アルコール性脂肪性肝疾患といいます。食べ過ぎや運動不足など、生活習慣によって肥満になっている人の約80%が脂肪肝になっているをいわれていて、これが悪化して炎症が起こると脂肪性肝炎となります。
2. ウイルス性肝炎
肝炎ウイルスと呼ばれるウイルスが身体に入ると、血液を経由して肝臓の細胞に感染します。ウイルス自体が肝細胞を壊すわけではありませんが、免疫細胞はウイルスに対抗するために肝細胞ごと攻撃してしまいます。これが原因で肝臓に炎症が起こる症例を、ウイルス性肝炎といいます。
ウイルスをなかなか排除できずに、炎症が長期に渡って続くと慢性肝炎となります。
慢性肝炎全体の約90%が、肝炎ウイルス感染によるものです。
肝炎ウイルスの種類による特徴について詳しくは、「B型肝炎とC型肝炎は何が違うの?」をご覧ください。
3. アルコール性肝障害
お酒になどに含まれるアルコールの90%は肝臓で分解されます。お酒をたくさん飲む人や、量はそれほど多くなくても毎日続けて飲み続けると、それだけ肝臓にかかる負担も大きくなります。そのようなアルコール摂取を続けていると、肝臓の細胞の中に中性脂肪が溜まっていきます。脂肪が溜まって白く膨れ上がった状態の肝臓を脂肪肝といいます。
この時点で断酒すれば、数週間で脂肪がとれて肝臓は元の状態にもどっていきますが、飲酒を続けると炎症化して肝炎へと進行します。
アルコール性肝炎が重症化すると、飲酒を止めても簡単には元の肝臓には戻りません。肝臓の腫れが引かず、腎不全、消化管出血、肝性脳症などの合併症を引き起こすこともあります。
アルコール性肝障害の診断基準は、以下のとおりです。
アルコール性肝障害とは、長期(通常は5年以上)にわたる過剰の飲酒が肝障害の主な原因と考えられる病態で、以下の条件を満たすものを指します。
【出典】日本アルコール医学生物学研究会(JASBRA)診断基準(2011年)(参考資料)
- 過剰の飲酒とは、1日に純エタノールに換算して60g以上の飲酒(常習飲酒家)をいう(表1)(ただし女性や遺伝的にお酒に弱いひとでは、1日40g程度の飲酒でもアルコール性肝障害を起こしうると言われている。)
- 禁酒により 血清AST、ALTおよびγ−GTP値が明らかに改善する
- B型肝炎やC型肝炎などの肝炎ウイルスマーカーや抗ミトコンドリア抗体、抗核抗体などの自己免疫性の肝臓病を疑う検査値がいずれも陰性である。
表1 各種アルコールの換算表
種類 量 アルコール度数 アルコール換算量 ビール(中瓶1本) 500 ml 5% 20g 日本酒 1合 180ml 15% 22g 焼酎 1合 180ml 35% 50g ワイン(1杯) 120ml 12% 12g ウイスキー ダブル 60ml 43% 20g ブランデー ダブル 60m 43% 20g
(肝炎情報センター「アルコール性肝疾患」より抜粋)
4. 非アルコール性脂肪性肝疾患
肝炎ウイルスの感染もなく、お酒の飲み過ぎでもないのに発症する肝臓病として、非アルコール性脂肪性肝疾患や、非アルコール性脂肪肝炎があります。これらの肝臓病も、進行すると肝硬変や肝がんになる恐れがあります。
脂肪肝を経て肝炎へと進行する点はアルコール性肝障害と同じですが、飲酒の習慣がないのに発症する点が異なります。こういった脂肪肝を、非アルコール性脂肪肝といいます。
アメリカの肝臓学会ガイドラインによる基準は、以下のとおりです。
- 肝臓に脂肪がたまっている
2. お酒の目立った習慣がない
3. 脂肪肝をきたすほかの要因がない
4. B型肝炎・C型肝炎ではない
こういった非アルコール性の脂肪肝や肝炎は、近年増加しています。
生活習慣の乱れが原因といわれており、内臓肥満やストレス、昼夜逆転した生活などが脂肪肝へとつながります。運動不足も一因であり、メタボリックシンドロームの肝臓版といったところです
5. 肝炎ウイルス感染者への給付金
アルコールや生活習慣を原因とした肝炎は、自己責任といえなくもないですが、ウイルス性肝炎については、本人に責任はないのに感染してしまったケースがあります。
集団予防接種や薬害肝炎などで感染してしまった人達は、自分には何の落ち度もなく、国の政策の不備で感染した被害者といえます。そのため、国も責任を認めており、こうした人達には給付金が支給されます。
B型肝炎給付金は、幼少期の集団予防接種の際に注射器の使い回しによってB型肝炎ウイルスに感染した人が対象となります。給付金額は病態ごとに細かく分かれていて、最高3600万円です。
C型肝炎給付金は、特定のフィブリノゲン製剤などを投与されたことでC型肝炎ウイルスに感染した人が対象となります。給付金額は病態によって3段階になっていて、最高4000万円です。
給付金を請求するには訴訟手続きが必要になるため、弁護士に依頼するのが一般的です。特にB型肝炎給付金は受給条件のハードルがあまり高くないので、たくさんの感染者が給付金を受け取っていて、請求手続きのノウハウをもった弁護士も探しやすく、安心して相談することができます。
6. まとめ
肝炎についてあまり詳しくなかった方は、ウイルス感染が主な原因と知って驚いたのではないでしょうか。しかも、多くの患者が自分に非がないことで感染しています。アルコール性肝炎のイメージが強かった方は、ウイルス性肝炎患者の方へ不当なネガティブイメージをもっていたのかもしれません。今後は見方をあらためましょう。
肝炎ウイルスは、誰が感染していてもおかしくありません。まだ一度も検査を受けたことがない人は、できるだけ早めに一度検査を受けてみてください。万一感染していた場合には、早期治療でご自身の健康を守るだけではなく、感染拡大を防いで家族や大切な人を守ることにもつながります。