B型肝炎キャリアの人が結婚するときに気をつけること
「B型肝炎の人は結婚できない」
そんな悲しい言葉を聞いたことがあります。
確かに結婚生活や出産と、B型肝炎ウイルスキャリアであることを完全に切り離して考えることはできません。
しかし、一昔前と違って今ではワクチンもあるし母子感染も防止できます。生活の中で注意しなければならないことは出てくるかもしれませんが、理解して受け入れることのできるパートナーであれば、B型肝炎が結婚を諦める理由にはなりません。
今回は、B型肝炎ウイルスキャリアの方が結婚を考えるときに注意しておきたいことを紹介します。
1. 結婚相手の理解
B型肝炎ウイルスキャリアの人の中には、これまでに差別や偏見を受けきたのが原因で、自分がB型肝炎ウィルスのキャリアであることをあまり人に話したくないと思っている人も多いと思います。
しかし、夫婦として生活していく上で相手に隠したままにすることはできません。相手への感染の問題は当然のこととして、そもそも隠し事を抱えていては落ち着いた信頼関係を築いていくのは難しいと思います。
穏やかな結婚生活をおくるためには、結婚前にB型肝炎ウイルスのことを伝えてしっかりと話し合い、結婚相手に理解してもらって一緒に取り組んでいくことが一番重要です。気持ちの面で他人事ではなく、二人の問題としてとらえてもらうことができれば、とても心強いことだと思います。
そして、ウイルスに関する正しい知識を身につけてもらうことも大切です。感染予防のための対応は必要になりますし、きちんと理解することで無駄に怖がったり不安になったりしなくて済むようになります。
性生活のこともありますが、夫婦生活をおくるには、B型肝炎ワクチンを接種してもらうことも考えた方がいいでしょう。
また、頭では理解していても日々の生活に影響がでてくると、それがストレスになることも考えられます。
例えば、定期検査をするために毎回その日の予定がつぶれてしまったり、通院するための労力・経済的な面での負担がじわじわとのしかかってきたりすることもあるでしょう。将来的に慢性肝炎を発症するかもしれませんし、病状が悪化すれば肝硬変や肝臓がんになってしまうリスクもあります。闘病生活が続くことにもなるかもしれませんし、看護が必要になるときもあるでしょう。
病気自体を理解していても、結婚生活へそういった影響が出る可能性についてまではイメージできていないこともあります。そういったことまでじっくり話し合って、一緒に背負っていけるパートナーであれば心配はいらないでしょう。
ただ、逆に考えれば、例えば交通事故などで結婚相手が後遺症を負うことになれば、あなたが支える立場になって、二人で困難に立ち向かうことになります。
どんな大変なことが起こっても、お互いを支えあって前を向いていけるのが、本当の夫婦の姿ではないでしょうか。
B型肝炎キャリアであることについて話し合うことは、そういった夫婦としての心構えを確認する機会とも言えるでしょう。
2. 義父母へ伝えるべきか
結婚相手の理解を得られたとしても、結婚は当事者同士で終わるものではありません。
今時古い考えにはなってきているとは思いますが、結婚とは家同士の結びつきであるという考えは今も根強く残っています。したがって、結婚相手の両親との関係も非常に重要です。
ただ、結婚相手の両親というと、世間一般でも嫁姑問題や舅とのコミュニケーションの問題をよく耳にするように、人間関係の作り方を間違えると後々まで尾を引くことにもなりかねません。B型肝炎のことを打ち明けるかどうか、打ち明けるとしたらどのように伝えるかは、非常に難しい問題です。
話を聞いて理解してもらえれば、それに越したことはありません。しかし、理解を得られなかったり否定的な反応をされたりするリスクもあります。最悪の場合、結婚に反対されてしまうということもあるかもしれないので、話すかどうかの判断は慎重にしましょう。
義父母の性格やパーソナリティの点で、そういった話を冷静に聞いてもらえるかどうかというのがまず問題になりますし、感染予防や発症リスクのような医学的な話を理解してもらえるかという問題もあります。また、そもそもの相性も問題になるかもしれません。
親御さんの世代によっては、先入観やネガティブなイメージをもっている可能性もあります。保守的な性格の人だと、今までにこういった感染症の人に接した経験がなければ、好意的な反応は望めないかもしれません。
そういったことが問題にならず、打ち明けて理解が得られれば、今後も何かと配慮してもらえたりサポートを得られたりといったことが期待できます。
話すべきかの判断が難しいときは、友人のこととして話してみて反応を見るなど、リカバリー可能な範囲で探りをいれてみるのもいいでしょう。
ただし、打ち明けないという判断をした場合でも、積極的に嘘をつくのはできるるだけ避けた方がいいです。後々わかったときに不信感を抱かせてしまうことになるので、その話にはあえて触れずに伏せておく、という対応をとるのがいいでしょう。
義父母と同居する場合は、隠しておくのは難しいかもしれません。打ち明けるのが難しければ同居を避ける方向にもっていくのが無難です。
3. 子供について
子供をつくるかどうかは、夫婦としての重大な決定事項でもあり、全てのカップルが結婚前にある程度話し合っておくべきテーマであるといえるでしょう。
その際、B型肝炎キャリアであることが子供をつくる障害になるのか?というのが問題になります。
B型肝炎ウイルスが子供に感染するのか?という点については、女性にとって深刻な問題です。しかし、現在では出産時に母子感染防止の処置がされるので、妊娠出産についてはあまり心配はいらないと考えられます。出生後にも子供への感染を予防するための対応は必要になりますが、医師の指示に従っていれば、大きな問題はないでしょう。
ただし、母子感染防止の処置も絶対ではないので、稀に出産時感染が起こってしまうことはあります。かなり低い確率ではありますが、そういったことも早いうちに話して認識を共有しておいた方がいいでしょう。
また、子供を育てられるのかという問題もあります。既に肝障害が出ている人や検査の数値が良くない人にとっては、将来的に育児をしていけるのか、養育のための費用を稼いでいけるのか、といった懸念は切実なものとなります。家族からの援助や収入など、人それぞれの事情も含めて話し合っておきましょう。
4. 世帯内の感染予防
B型肝炎キャリアの人が結婚相手の両親や兄弟姉妹などの親族と同居するときは、世帯内での感染予防に配慮する必要があります。
- カミソリ・歯ブラシ・タオルなどを共有しない
- 傷があるときは絆創膏などで覆う
- 血液や体液、排泄物の付いたものは適切に処理する。
といったことに気をつけましょう。
また、一緒に食事をするなど、感染の可能性のない行為について理解してもらうことも大切です。
注意が必要なことと必要ないことの区別がつくことで、生活空間に安らぎを感じられるようになっていきます。
同居している人との生活上の関わりが深ければ、B型肝炎ワクチンを接種してもらうのも感染予防には効果的です。
5. B型肝炎給付金
B型肝炎ウイルスに感染していることで夫婦生活にかかる負担は様々あると思いますが、その中で経済的な面での負担を軽減する方法のひとつとして、B型肝炎給付金があります。
B型肝炎給付金とは、幼少期に受けた集団予防接種で注射器が使い回しされていたことが原因でB型肝炎ウイルスに持続感染してしまった人に対して国から支払われるお金です。
無症候性キャリアの人は給付金の支給に加えて、定期検査費用や家族のワクチン接種費用などにも補助があります。また、将来に肝疾患を発症したときは病態に応じた金額の追加給付金を受け取ることが出来ます。
給付対象となる条件がなかなか複雑ですが、弁護士に相談して給付対象かどうかを判断してもらうことができます。
母子感染の人や感染原因が分からない人も対象になる可能性があるので、一度は弁護士に相談してみてください。
6. まとめ
病気の問題は、真摯に誠実に話し合ったとしても理解してもらえないこともあるでしょう。そのために結婚を諦めなくてはならないこともあると思います。そんなときは感染したことを憎みたくなることもあるでしょう。
ただ、ウイルス感染がなかったとしても、人にはそれぞれ個性や価値観、考え方、習慣の違いがあり、他人が一緒になる以上、様々な形での衝突や食い違いは必ず出てきます。どんなに好きな人であっても、どうしても相容れないことというのはあります。早いうちにしっかり話し合っておくことで、後になって「こんなはずじゃなかった」と思う可能性は減りますし、理解しあえればそれだけ絆も深まることは確かです。
価値観の違いとB型肝炎キャリアであることを同列に語れるものではないですが、結婚相手や両親と話し合うことは、夫婦生活で生じるかもしれない状況を先取りしているとも言えます。理解しあえなかったときは悲しいですが、B型肝炎のことがなくてその人と結婚していたとしても、いずれ理解しあえなくなっていたのではないでしょうか。
B型肝炎のことも含めて分かり合える人は必ずどこかにいると思います。そんな人と出会って幸せをつかむことをお祈りしています。