世界肝炎デー2018

7月28日は世界肝炎デーです。
B型肝炎やC型肝炎などのウイルス性肝炎は、原因となるウイルスに感染することが原因で引き起こされます。そういったウイルスの感染者は世界中で3億2500万人と推計されており、年間134万人もの人が命を落としています。WHOでは、これを世界的に重大な健康課題の一つと捉え、毎年7月28日を世界肝炎デーに定めています。
今年のテーマは、「 Test. Treat. Hepatitis (肝炎の検診を、治療を)」です。
肝炎は長い間症状が出ないこともあるため、検査や治療を浸透させるのが難しく、それがウイルス性肝炎対策の大きな障害となっているため、検診・治療の範囲を広げることを目的とした啓発キャンペーンが展開されます。

1. 世界肝炎デーについて  

世界肝炎デーは、2006年に World Hepatitis Alliance (世界肝炎同盟)が提唱し、2007年から運営を始めました。その後、2010年のWHO総会で肝炎啓発キャンペーンのための記念日として制定され、2011年からWHO認定の世界啓発の日の一つ、「世界肝炎デー」として実施されています。

B型肝炎・C型肝炎などのウイルス性肝炎が蔓延していくのを防ぐためには、感染予防に関する正しい知識を世界レベルで広めて、予防・検査・治療を促進していかなければなりません。
また、肝炎ウイルス感染者への差別や偏見をなくしていくためにも、正しい知識と予防意識の啓発は重要です。世界肝炎デーには、そういった啓発キャンペーンが世界各地で行われます。

2018年の世界肝炎デーには、モンゴルのウランバートルにおいて、WHOとモンゴル政府による一連の記念イベントが開催される予定です。

WHOのイベントと活動は、世界の国と地域で次のようなことを目標に掲げています。

  • 肝炎予防、検査、治療、ケアサービスのスケールアップを支援するために、WHOの検査と治療の勧告を促進する。
  • ベストプラクティスを紹介し、肝炎の普遍的な健康保険を促進する。
  • ウイルス性肝炎との闘いにおけるパートナーシップと資金調達を改善する。

2. ウイルス性肝炎に関する世界的な状況  

慢性肝炎の蔓延は、一部の国で特に深刻な状況になっています。
世界の慢性肝炎患者の約50%は、次の11ヶ国に偏っています。

ブラジル、中国、エジプト、インド、インドネシア、モンゴル、ミャンマー、ナイジェリア、パキスタン、ウガンダ、ベトナム

肝炎罹患率が高いのは、次の17ヶ国です。

カンボジア、カメルーン、コロンビア、エチオピア、ジョージア、キルギス、モロッコ、ネパール、ペルー、フィリピン、シエラレオネ、南アフリカ、タンザニア、タイ、ウクライナ、ウズベキスタン、ジンバブエ

これらの28ヶ国に、世界の肝炎の70%が集中しています。

昨年の、世界肝炎デー2017では、以下のようなことが発表されました。

1ウイルス性肝炎は、世界では健康上の大きな問題であり、早急な対策が必要です。

   2015年末に、慢性肝炎の感染者は約3億2,500万人でした。

    世界では、2015年に、B型肝炎(HBV)感染に2億5,700万人が感染し、C型肝炎(HCV)に7,100万人が感染しています。

 

2.感染者の中でも、特に低所得国や中所得国では、検査や治療を利用できた人は大変少なくなっています。

    2015年末までに、検査で診断された人は、HBV感染者で9%、HCV感染者で20%のみでした。

    2015年に、HBVへの感染が診断された人のうち治療していたのは8%(または170万人)、HCVへの感染が診断された人のうち治療を開始したのは7%(110万人)でした。

   2030年での世界目標は、HBVおよびHCVへの感染の検査を受けた人の90%、治療を適格とする患者の80%が治療を受けていることです。

 

3.2015年には、ウイルス性肝炎で134万人が死亡しました。

  (これは)結核やHIVでの死亡者に匹敵します。肝炎による死亡者は増えています。

 

4.新たに肝炎への感染が続いているのは、ほとんどがC型肝炎です。

  HBVに慢性的に感染した5歳未満の子どもの数は、(ワクチン導入前の4.7%から)2015年には1.3%に減少しました。 

  B型肝炎ワクチンは、年間に450万もの子どもへの感染機会を防いでいます。しかし、2015年には、成人175万人が新たにHCVに感染しました。これは、主に薬物注射によるものです。

   一部の国では、医療施設内での感染対策が不十分な注射器からも感染しています。

 

5.2030年での撲滅の達成は、大きすぎる野望ではありません。

  感染への高い脅威のある28の国からの報告は、(見通しを)楽観視させます。

  世界肝炎デー2017では、WHOが28か国からの情報を公開しています。ここでは、多くの課題があるにもかかわらず、肝炎を撲滅するための世界での取り組みが根付いていることが示されています。しかし、また、大きな障害が残されています。

3. 肝炎撲滅への取り組み  

WHOでは、2030年までに加盟国でのウイルス性肝炎を撲滅するという目標をたてており、これまでも様々な取り組みを行なっています。

2015年、WHOは「慢性B型肝炎とともに暮らす人々のための予防、ケア、治療のためのガイドライン」を発行し、B型肝炎の検査や治療、薬剤の使用に関して推奨する方法を示しました。

2016年のWHO総会で「ウイルス性肝炎部門の世界保健戦略、2016-2020」を採択しました。
この戦略では、ウイルス性肝炎の撲滅を視野に入れており、2030年までにウイルス性肝炎感染者の90%減少、ウイルス性肝炎による死亡者の65%減少を目標として掲げています。そして、目標達成のためWHOおよび各国に求められる活動が、戦略として説明されています。

2030年に向けた継続可能な発展目標で、肝炎に関する目標に取り組む世界各国に対し、WHOは次のような分野で支援しています。

  • 意識の向上、パートナーシップの促進、人的資源の動員
  • エビデンスに基づく政策と行動するためのデータの定形化
  • 感染経路の防止
  • スクリーニング、管理、治療の実行

 2017年の世界肝炎デーでは、肝炎撲滅への取り組みと呼びかけが示されています。

  • 2016年のWHO総会では、WHOのウイルス性肝炎への戦略が正式な承認を得ました。政治的にも連携して活用していくことになりました。
  • 肝炎の脅威に曝されている国に対して、肝炎対策を実行、指導しています。
  • 個人、パートナー、国民による活動への参加を促しています。
  • 「世界の肝炎に対するWHO報告書2017」では、さらに大規模な世界的取り組みの必要性を訴えています。

4. 日本における取り組み

日本では、2010年にWHO総会で世界肝炎デーの実施が決議されたことを受けて、同じ7月28日を日本肝炎デーと設定しました。従来から行なってきた「肝臓週間」と連携して普及啓発活動を行っています。

また、成人してからも持続感染を引き起こす欧米型のB型肝炎ウイルスが増加しつつあることから、性的接触による感染の予防など、日本固有の状況に関する啓発活動も行っています。

また、厚生労働省肝炎総合対策推進国民運動「知って、肝炎プロジェクト」では、特別参与の杉良太郎さんをはじめとしたスペシャルサポーターによる啓発活動も行なわれており、日本肝炎デーのイベントでは例年、伍代夏子さんや石田純一さんが参加され、参加者へメッセージを送っています。

5. まとめ

ウイルス性肝炎は、リスクの高さに比べて知名度が低く、エイズ感染予防に注意を払う人はいますが、肝炎ウイルス感染の予防に意識を向ける人はあまり多くないのが現状です。

しかし、2017年の世界肝炎デーでのWHOメッセージにもあるとおり、ウイルス性肝炎による死亡者はエイズにも匹敵する数になっており、現在も増え続けています。

今回の世界肝炎デーをきっかけに、ウイルス性肝炎について正しい知識を身につけてみてはいかがでしょうか。

また、日本では肝炎ウイルスの無料検査や、感染者への給付金や補助金などの制度も数多く用意されています。当サイトでも解説していますので、ご自身やご家族ご友人などが肝炎ウイルスに感染している方は、この機会に制度についてもご確認ください。

まずは給付金対象か再確認してみましょう>>