B型肝炎給付金でもらえる金額は?
B型肝炎給付金では病態や発症時期により金額が決められており、最大3600万円を受け取ることができます。
また、弁護士を使って訴訟した場合の弁護士費用や、裁判の証拠として使うために検査した場合の費用の一部が支給されます。
母子感染などによる二次感染者もB型肝炎給付金の対象となり、同じ金額がもらえるので、家族の中に何人も給付金対象者がいる場合もあり、合計でかなりの金額になることもあります。
1. 病態、発症時期ごとの給付金額
B型肝炎給付金の金額は、対象者の状況に応じて決められています。
まず、肝臓の症状によって6つの病態に区分けされます。
- 死亡
- 肝がん
- 重度肝硬変
- 軽度肝硬変
- 慢性肝炎
- 無症候性キャリア
無症候性キャリアという言葉は聞きなれないかもしれませんが、B型肝炎ウィルスに感染はしているけれど症状が出ていない状態のことです。潜伏期間という風に思っていただいて良いと思います。
「インフルエンザの潜伏期間が2、3日で…」という言い方はよく耳にしますが、これはインフルエンザウイルスに感染してから症状が出るまでの期間です。B型肝炎ウイルスの場合は、この期間がずっと長く、症状が出ないことの方が多いくらいですが、この状態のことを無症候性キャリアと言います。
どの病態に当てはまるかの判定基準は、B型肝炎給付金の制度で検査内容や数値が細かく決められています。この基準は、B型肝炎給付金の金額を区分するためのものなので、持続感染の有無なども加味して決められています。病院で医師から言われた診断とは一致しないこともあるのでご注意ください。
給付金は病態ごとに4つの金額に分けられます。
死亡、肝がん、重度肝硬変は、同じ金額です。
<発症から20年以内の場合>
死亡、肝がん、重度肝硬変・・・3600万円
軽度肝硬変・・・2500万円
慢性肝炎・・・1250万円
無症候性キャリア・・・600万円
発症してから20年の除斥期間を経過すると金額が大きく下がります。
<発症から20年経過した場合>
- 死亡、肝がん、重度肝硬変・・・900万円
- 軽度肝硬変 (治療中)・・・600万円
- 軽度肝硬変 (治癒済み)・・・300万円
- 慢性肝炎 (治療中)・・・300万円
- 慢性肝炎 (治癒済み)・・・150万円
- 無症候性キャリア・・・50万円
無症候性キャリアの場合はそもそも発症自体していないので、発症ではなく、感染してから20年になります。
「感染してから」というのは、一次感染者の場合は予防接種を受けたときです。B型肝炎給付金対象の母親から母子感染した人の場合は、生まれたときです。
実際に計算してみるとわかりますが、無症候性キャリアの場合は20年の除斥期間を経過していないケースはほぼありません。一次感染者でB型肝炎給付金の対象となるのは、生年月日が昭和16年7月2日から昭和63年1月27日なので、少なくとも30代後半にはなっています。7歳までの幼少期に予防接種を受けてから20年は確実に経過しています。
また、B型肝炎給付金対象の母親から母子感染した人であれば、20歳になっていなければ、20年経っていないことも考えられますが、昭和61年以降は出産時の母子感染予防対策が行われるようになっており、母子感染している可能性はほとんどありません。
そういうわけで、無症候性キャリアの人はほとんどが除斥期間経過後ということになります。
給付金自体の金額は少なくなりますが、今後の検査費用などが補助されるようになります。詳しくは、 「4. 今後の定期検査費用など」をご確認ください。
2. 弁護士費用の補助金
B型肝炎給付金でもらえる金額は、病態ごとの給付金だけではありません。
弁護士をたてて訴訟した場合は、弁護士費用の補助として給付金の4%相当の金額が支給されます。自分で手続きするより弁護士を使った方が、もらえる金額が増えるということです。
病態 | 除斥期間20年 | 給付金額 | 4% | 合計 |
---|---|---|---|---|
死亡、肝がん、重度肝硬変 | (経過前) | 3600万円 | 144万円 | 3744万円 |
死亡、肝がん、重度肝硬変 | (経過後) | 900万円 | 36万円 | 936万円 |
軽度肝硬変 | (経過前) | 2500万円 | 100万円 | 2600万円 |
軽度肝硬変 | (経過後、治療中) | 600万円 | 24万円 | 624万円 |
軽度肝硬変 | (経過後、治癒済み) | 300万円 | 12万円 | 312万円 |
慢性肝炎 | (経過前) | 1250万円 | 50万円 | 1300万円 |
慢性肝炎 | (経過後、治療中) | 300万円 | 12万円 | 312万円 |
慢性肝炎 | (経過後、治癒済み) | 150万円 | 6万円 | 156万円 |
無症候性キャリア | (経過前) | 600万円 | 24万円 | 624万円 |
無症候性キャリア | (経過後) | 50万円 | 2万円 | 52万円 |
3. 証拠のための検査費用
B型肝炎訴訟では、集団予防接種以外の感染原因がないことを確認するためにいくつかの検査をする必要があります。そういった検査にかかった費用のうち、下記に相当する金額が給付金と一緒に支給されます。
通常の訴訟のルールであれば訴えられている国が証拠をだして反論する必要があることを、あらかじめこちらで用意しているかたちになるので、一定金額は国が負担するということです。
- 父親が持続感染者でないことを確認するための血液検査費用
領収書があれば、その額が支給されます。
ただし、他の項目が含まれていると、支給されない場合があります。 - 父親と一次感染者のB型肝炎ウイルスの塩基配列を比較した検査費用
領収書がなくても、65,000円が支給されます。 - ジェノタイプ検査費用
領収書がなくても、2,300円が支給されます。
領収書を出して保険給付がないことを確認できれば、8,500円が支給されます。 - サブジェノタイプ判定検査
領収書がなくても、15,000円が支給されます。
4. 今後の定期検査費用などの補助金
除斥期間を経過した無症候性キャリアの人は、給付金50万円とは別に今後の定期検査などの費用が補助されます。
(1) 定期検査やそれにともなう診療などの費用
(2) B型肝炎ウイルスの母子感染を防止するための費用
(3) 同居の家族へのB型肝炎ウイルス感染を防止するための費用
(4) 定期検査手当として(1)の定期検査1回につき1万5千円(年2回まで)
給付金を受け取るときに受給者証が交付され、病院の窓口で提示すると検査費用を負担しなくてよくなります。受給者証の交付前に検査していた場合は、後から請求すると検査費用相当の金額が振り込まれます。
5. 家族での請求金額
B型肝炎給付金は、一次感染者である母親から母子感染した人や、父親が一次感染者で家庭内感染した人も、二次感染者として給付金の対象になります。二次感染者だから金額が低くなるということはなく、二次感染者も一次感染者と同じ基準の金額がもらえます。
例えば、母親が一次感染者で子供3人が母子感染しているような場合だと、4人全員がB型肝炎給付金の対象になります。家族全員が請求すれば、かなり大きな金額になるケースもあります。
母子感染や家庭内感染はいいことではありませんが、その始まりが予防接種だったとしたら、家族全員が被害を受けたことになります。給付金が大きな金額になるのも当然のことといえます。
6. まとめ
B型肝炎給付金の制度では、給付金の金額や付随して支給される費用の金額などが細かく決められていることがお分かりいただけたかと思います。
訴訟で請求しなかった金額は和解後にはもらえなくなるので、病態の間違いや検査費用の請求漏れなどがないか、手続きを進める際にはよくご確認ください。
付随する費用の中でも、金額が大きいのが弁護士費用です。
弁護士に依頼してB型肝炎給付金の支給を受ければ、それだけで4%上乗せされます。これは、B型肝炎給付金の制度として、弁護士に依頼することを想定しているためです。専門知識が必要で時間もかかる手続きなので、弁護士費用の一部を国が負担することで弁護士に依頼しやすいよう配慮されています。
弁護士に依頼すれば、細かい費用や金額も弁護士が確認してくれるため、請求漏れを気にする必要もなく安心です。